研究課題/領域番号 |
19K19368
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
唐牛 祐輔 関西医科大学, 医学部, 助教 (20826870)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Grit / 学修成果 / 学業達成 / 医学教育 |
研究実績の概要 |
本研究は学修過程におけるGritの役割を実証的に検討し、医学生の学修支援に役立てることを目的とする。Gritとは長期的な取り組みを必要とする目標に対して粘り強く追及する熱意を指す。長期の学修期間を要する医学教育ではGritは重要な役割を果たすと考えられる。本年度は、年度はじめに日本語版Short Grit尺度を用いて医学生のGritを測定し(調査1)、学期中に医学生の学習行動に関する調査を実施し(調査2)、年度末にGPAデータを収集した(調査3)。これらの調査データから、Gritと医学生の学業成績(GPA)の間に関連が見られるかを検証した。併せて、Gritとどのような学習行動が関連するのかを探索的に検討した。 調査の結果、GritとGPAの間に弱いながらも有意な正の相関があり、Gritが高いほどGPAが高いことが明らかになった。また、相関分析およびパス解析の結果、Gritが高い学生ほど学業達成に関連した行動(授業出席や予習・復習時間)を多く行っており、それが学業成績(GPA)につながっていることが明らかになった。一方でGritが高い学生は学業非関連行動(ゲームやネットサーフィン)が少ないことが示された。以上から、Gritは目標(学業達成)に関連する行動を促進し、一方で非関連行動を抑制することで目標達成に寄与することが明らかになった。ただし、Gritが高い学生はクラブ活動に熱心に取り組む傾向もあり、クラブ活動への参加時間の長さはGPAに負の影響を与えていた。Gritは学業関連行動を介して学業成績に正の影響を及ぼすと同時に、クラブ活動など一部の学業非関連行動を介して学業成績に負の影響も及ぼしており、Gritと学業達成の関係を明らかにするためにはより詳細に影響過程を検討する必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って調査1~3を実施し、医学生のGritと学業達成の関係を検証するためのデータを得ることができた。研究成果の一部は、第51回日本医学教育学会大会、AMEE2019など国内外の学会で発表した。また、学業達成を数値化するためにディプロマ・ポリシー達成度の指標を開発し、これについてもDSIR2019において発表した。研究は当初の計画通りに順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も先述した調査1~3を実施し、医学生のGritと学業達成の関係についての検証を行う。そして経年データを蓄積して縦断的分析を行い、医学生の長期的学修に対するGritの効果を検討する。また、学業達成の指標としてGPAだけでなく、卒業試験などのハイステークス・テストの成績や国家試験の合否、ディプロマ・ポリシー達成度など多くの指標を用いて、Gritと学業達成の関連について多角的に検討を行う。 ただし、新型コロナウイルス感染症の影響により一部例年通りに医学生のデータを収集できない可能性があり、調査の実施方法や実施時期を変更する必要がある。また、学生の学習行動(出席や学習時間)および学業成績についても1年目のデータと単純に比較できない可能性があり、分析方法については改めて検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は年度内に英語論文の投稿を予定しており英文校正費として数万円を残していた。しかし、英語論文については次年度以降の投稿に向けて現在準備中であり、そのためその英文校正用の予算を翌年度に繰り越すことにした。
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