研究課題
2022年度は、昨年度に引き続き、静岡がんセンター臨床ゲノム研究「プロジェクトHOPE」に参加した症例のうち、約5000症例分で検出された二次的所見の患者への返却、遺伝カウンセリングを実施し、患者の属性や既往歴、がん家族歴、サーベイランス状況などのデータ収集を行った。また、保険診療として開始されたがんゲノム医療における二次的所見(germline findings)の患者への返却、遺伝カウンセリングも並行して実施した。二次的所見/germline findings を開示した症例については、遺伝カウンセリングや血縁者のフォローを継続中である。「プロジェクトHOPE」において、遺伝性腫瘍関連遺伝子の二次的所見は参加者全体の約1.3%、がん以外の遺伝性疾患関連遺伝子の二次的所見は参加者全体の約0.3%に認められた。また、保険診療のがんゲノム医療(腫瘍細胞の解析)においては、全体の約12%にPGPV(presumed germline pathogenic variant)が認められ、うち約半数が遺伝カウンセリングを受診した。二次的所見やPGPV開示がきっかけで、血縁者の遺伝子検査や発症前のサーベイランスの開始、血縁者のがんの早期発見につながる症例もあり、二次的所見やPGPVを報告し、適切なサーベイランスに繋げることは、患者本人および血縁者にとって医学的メリットがあると考えられた。しかし、二次的所見やPGPVの開示を希望しない症例、開示を受けたものの血縁者との情報共有が進まない症例もあり、二次的所見やPGPVの受け止め方は個々の状況によって異なるものであった。二次的所見やPGPVの受け止め方に関わる要因や、開示後のニーズを明らかにすることは、現在進められてる全ゲノム解析における二次的所見の患者還元や適切な遺伝カウンセリングを検討する上で有用なデータとなると考えられる。
3: やや遅れている
2020年度に、一身上の都合により研究を中断した。また、新型コロナウィルスまん延により、患者の来院や遺伝カウンセリング外来受診の延期、各種ガイドライン改定に伴うプロジェクトHOPE研究における開示対象遺伝子の見直し、再解析などにより、当初の計画よりも進捗状況は遅れている。
引き続き二次的所見やPGPVの開示と遺伝カウンセリングを進め、データを収集する。同時に、これまで開示を実施した症例のデータの集計、分析をおこない、得られた結果をとりまとめ、2023年度に成果の発表を行いたい。
新型コロナウィルスまん延に伴う、所属施設の学会やセミナー等への参加制限、オンライン参加推奨などにより、主に旅費の支出が想定外に少なかった。今年度は、このような制限の緩和により、学会やセミナー等への現地参加の機会が増えることが予想されるため、旅費としての支出が増える予定である。また、研究成果の英文論文投稿のための英文校正、オープンアクセスのための費用として使用する予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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