敗血症とは感染+臓器障害の症候群であり、あらゆる場面で遭遇する致死的疾患群である。米国・欧州集中治療学会などでは敗血症は治療速度優先の単一の治療ストラテジーで対応するように推奨している。また、そのストラテジーは年々、エビデンスに基づき変更が加えられている。敗血症は他の救急疾患に比べて非常に複雑である。具体的には敗血症の構成因子は原因菌、感染臓器と障害臓器、背景に分けて考えることができる。これらを一塊のものとして捉えて良いのだろうか。そのため、研究者は臨床家が治療応用できるように単一で捉えてきた敗血症を臨床応用しやすいと言う視点で組分けすることと現在の治療戦略の検証を行うことを目的とした。 研究者がこれまで研究・論文発表してきた内容は以下である。真菌による敗血症患者のサブグループ、感染部位ごとによる敗血症の再分類、敗血症の診断学、SIRS、qSOFAによる予測能の違い、敗血症の定義の違いが与える影響を調べた。更に血糖値による予後の違い、細菌の毒性度による違い、血液培養陽性による影響、糖尿病の既往の影響、体温の影響、重症呼吸不全、凝固障害、フレイル、BMIの影響などを行った。また、近年、敗血症のガイドラインと治療バンドルに変更があったことから、その影響も検証した。本研究では敗血症1時間バンドルは3時間バンドルと違い有効であった。その中でも早期抗菌薬の投与の有効性が証明された。また、早期血管収縮薬投与開始についても検討した。これまでの大量輸液後に血管収縮薬の投与を開始する方針よりも総輸液量が減らすことができ、予後を悪化させないと言う結果であった。重症患者の場合、亜急性期において、しばしば体液貯留が問題となることがある。必要な輸液と血管収縮薬を共に早期から開始することが有効であると言う結果は近年の世界的なエビデンスと矛盾なく、敗血症診療の方向付けをサポートする研究になった。
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