研究課題/領域番号 |
19K19377
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
春田 淳志 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (70758911)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多職種連携 / ネットワーク分析 / 地域包括ケア |
研究実績の概要 |
3年間で地域包括ケアの実態を可視化するために、ネットワーク分析とリアリスト分析の方法を用いた研究を計画した。 2019年度に実施したネットワーク分析の論文については、国際誌Family Medicine and Community Healthにアクセプトされ、2020年に公表された。 2019年10月、2020年2月に職種・組織を超えて情報共有ができるネットワークの実態を明らかにするために、ネットワーク分析の手法に基づき、茨城県神栖地域において複雑なヘルスケア課題となりうるテーマにおいて、保健医療介護福祉専門職間ではどのような「相談する/相談を受ける」人間関係のネットワークを構築しているかを明らかにした。以下の5つの領域;1)日常業務の相談 2)独居の急性腰痛症の相談 3)近所から通報されたごみ屋敷の相談4)徘徊が強くなった認知症患者についての相談 5)学習会の相談 について分析した。日常業務の相談はネットワークが大きく、媒介存在の影響が大きかった。腰痛・ごみ屋敷の相談は三角関係や媒介存在が弱かった。認知症の相談も腰痛・ごみ屋敷のネットワークの特徴に近いものの、各ノードの持つリンクのばらつきは日常業務相談に続いて小さく、参加者がもつ相談関係のリンクは他のテーマに比して持っていることが予想された。学習会の相談はハブとなる人物が明確に存在し、三角関係や相互性が高いネットワークであることが明らかになった。以上の内容について、2020年10月に実施された第13回日本保健医療福祉連携教育学会で発表した。 リアリスト分析については、1)地域中核病院における人間関係の原理を基にした地域包括ケアシステム構築の統合プロセスについて、2)医学生を対象とした地域医療実習における医学生が健康の社会的決定要因を学ぶメカニズムについて、リアリスト分析を行い、学術集会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に八戸で行ったネットワーク分析については、国際誌Family Medicine and Community Healthに論文がアクセプトされた。 神栖市で行ったネットワーク分析については、2020年度に学会発表を行い、現在論文投稿中であり、おおむね順調であるといえる。 リアリスト分析は当初経年的に実施する予定であり、2019年度は方法論の総説がアクセプトされ、医学生の地域医療教育プログラムのリアリスト分析の論文が国際誌Meidcal Teacherにアクセプトされ、順調であった。しかし、2020年度は新型コロナウイルス感染症の流行で現地での調査が難しくなったため、リアリスト分析の手法では既存のデータをもとに、地域の中核病院に焦点を当て、そこから見えてくる人間関係の統合について分析し、日本プライマリ・ケア連合学会にて発表した。また、地域医療実習における医学生の健康の社会的決定要因についての学びのメカニズムを探るという表題で日本医学教育学会にて発表した。地域包括ケアに関わる現地でのデータ収集が困難になったため、既存のデータからの分析にはなったが、おおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は経年的に収集した八戸のネットワーク分析のデータを統合し、患者・家族のアウトカムとの関連を分析し、学会発表と論文執筆を予定している。 リアリストアプローチについては、現地調査が難しいため、地域医療実習における医学生の調査、既存のデータを使った分析、遠隔でも可能なインタビュー調査、文献調査などを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため、現地調査が難しくなった。結果として、予定していた現地への交通費などの支出が抑えられた。さらに情報収集のための学術集会等の交通費などの支出もおさえられたことが次年度使用額が生じた理由である。次年度は遠隔でも可能なインタビュー調査での逐語録などで研究費使用を検討している。
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