研究課題
2021年度は、自施設において2011年から2017年に取り扱った解剖事例から選定、抽出した診療関連死象事例147事例において、I. 受診直後の予期しない死亡、II. 手術および侵襲 的な医療行為、また薬剤投与に関連する死亡疑い、III. 医療行為や診断過程には問題がないと思われたが、主に 遺族感情による死因究明の希望があったもの、 IV. 病院・介護施設における予期せぬ事故や死亡など、患者管理・ケアが問題となっているもの、の4種に分類 し、医学的観点から、主に死因・発生施設・診療科や部門・届出者・死亡者の年齢性別・解剖の種類・解剖結果からの医 療行為と死亡の因果関係の判断につい て包括的にまとめ、2010年代に創設された新しい死因究明制度としての死因・身元調査法に基づく解剖(新法解剖)、及び 医療事故調査制度の発足の前後の事例 を比較し、これら法改正や制度改革の実際の法医解剖における診療関連死事例の傾向と特徴への影響を検討した。その結果、これらの制度の発足以降、診療関連死における司法解剖の割合は減少傾向にあり、即ち刑事事件としての扱いが減少傾向にあること、高齢化社会を反映して 施設内の予期しない事故など医療行為による有害事象というよりは施設の管理責任が問われる事例が増加していること、また警察届出を端緒としない院内および 第三者機関の支援による調査として期待が寄せられている医療事故調査制度が対象とできる事例は、上記のように分類した診療関連死の中では限られていること、診療関連死事例調査においては情報開示に刑事訴訟法上の制限がなく、医療現場に結果をフィードバックすることが可能な新法解剖の扱いが有用である可能性などが見出された。この結果を英語論文にまとめたものは、英文査読誌に受理されており、2022年度中に出版予定となっている。また、調査にあたって貴重な警鐘事例と思われたものについても、英文査読誌に事例報告として2報発表した。
3: やや遅れている
昨年まで、収集した事例の実際の法的処遇について包括的に調査を行い、解剖結果が紛争解決等に与えた影響を検討すべく、裁判所や地方検察庁等への聞き取り調査や尋問調書閲覧を予定し、また国外法医学施設への視察等も予定していたところ、新型コロナウイルス感染症の拡大状況からこれが不可能の状況が生じていた。
今後は、収集した事例の実際の法的処遇について、尋問調書閲覧や判例データベース による調査も並行して進める。また、2018年以降の事例についても収集を行い、事例の集積に努める。また解剖情報を統合し、再発予防のための勧告やシステム 改善の元となるデータベース構築についても、事例検証と並行して医療データの利活用のためのデータサイエンスの実践的技術・知識を習得中であり、事例分析 のために収集すべき情報や入力法の標準化 を目指しモデル作成を試みる予定である。
本年、予定していた国際学会出席や海外施設視察調査などを計上しなかったため。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Journal of Law and Medicine
巻: 29 ページ: -
Journal of Forensic Sciences
巻: 67 ページ: 377-383
10.1111/1556-4029.14874
巻: 66 ページ: 1980-1985
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