研究実績の概要 |
研究期間全体では、2011-2017年の診療関連死剖検事例147例を主に4種に分類し、死因・身元調査法解剖創設と医療事故調査制度の発足の前後の事例を比較し、その傾向と特徴、影響を検討し、刑事事件としての扱いは減少傾向であること、管理責任が問われる事例が増加傾向であること、解剖情報を有効活用するには情報開示に制限が少ない死因・身元調査法解剖が有用である可能性を論文化し、英文査読誌に掲載(Yamaguchi et al. J Law Med 2022; 29: 50-521)された。また警鐘事例として貴重なものを論文化し、英文査読誌に3報発表した(Yamaguchi et al. J Forensic Leg Med 2019; 92-96, Yamaguchi et al. J Forensic Sci. 2022; 67(1): 377-383, Yamaguchi et al.J Forensic Sci. 2021; 66 (1): 1980-1985) 。最終年度は、警鐘事例の学会報告1報や救急医学会総会における臨床医との情報交換とともに、研究総括に向けコロナー制度下で先進的な死因究明をおこなっているオーストラリア・ヴィクトリア州法医学研究所視察を行った。コロナー法廷における診療関連死事例の審議を見学する機会からは責任追及でなく事故再発予防を目的とした事実検証プロセスについての理解を深め、コロナーと法医による剖検事例決定の会議への参加により、決定プロセスに専門家が関与する制度導入の必要性を確認し、また救急医療施設見学により法医学と臨床医学現場との死因究明における協働のあり方への知見を得た。これらを踏まえ、本邦でも解剖情報を統合し、医療機関へフィードバックする方法、事故再発予防、システム改善に資するための制度設計についての論考及び提案を行い、更に発展させる予定である。
|