研究課題/領域番号 |
19K19382
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 令奈 (大関令奈) 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (30822704)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乳癌 / 患者医師関係 / 意思決定 |
研究実績の概要 |
具体的内容:2021年1月から2月において、乳腺外科医に対し記述式アンケート郵送調査を実施した。回収率は30%を超え、記述データの集計と統計学的な検討を行なった。結果は概ね前回の質的調査を支持するものであったが、一部は量的調査を行わなければ得られない貴重なデータであった。具体的には、多くの医師がこのような意思決定において葛藤を覚えていること、しかしどのように進めたらよいかがわからないということである。彼らに早急な支援が必要であることがわかった。また、並行して、腫瘍内科医に対しても追加の質的調査を行った。多くの腫瘍内科医は二種類に分類したグループのうち、患者が死を受け入れることができると信じているグループと同様の行動パターンをとっていることがわかり、前回の質的調査を裏付ける内容が得られた。また、2021年5月に医学的無益性を論じたWrong Medicine (Nancy Jecker ら)の翻訳本「間違った医療」を出版した。その中で、本研究の結果を一部反映させることができた。2021年8月より海外留学のため、研究を一時中断しているが、2022年8月より再開予定である。
研究の意義、重要性:研究停止中ではあるが、2021年11月の日本緩和医療学会にて本研究の結果をポスターにて発表した。他の研究者からは、「乳腺専門医に対してどのように対応する必要があるのか理解が深まった」「乳腺専門医と協働し終末期の乳がん患者に対応することが必要であることがわかった」等、実臨床に役立つ知見が得られたという前向きなコメントをいただいている。2023年をめどに、乳がん治療ガイドラインの改定が予定されているとの情報を得たため、意思決定コミュニケーションの改善のために、パブリックコメントとして本研究の結果をもとに提出する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外留学にて研究を中断している状況ではあるが、1月から7月までの間に、予定していた量的調査を完了することができ、その結果を11月の日本緩和医療学会にて発表することができていることは、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年8月に研究を再開する予定であるので、2022年度以内に、量的質的調査を統合し、国際ジャーナルに投稿予定である。なお、腫瘍内科医からの追加インタビューの結果は、日本語論文への短報として投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年8月より海外留学のため研究を中断している。年度途中での中断であるため次年度使用額が生じている。この使用額は、2022年8月から研究を再開した時に使用する予定である。具体的には、英文ジャーナルへの投稿に関して、英文校正料、投稿に際して必要な投稿料として使用する予定である。また、この研究を含めて、乳がん患者への一般的な意思決定支援に関する総説を日本語で投稿する予定であり、そのために必要な資料・書籍の購入にも使用する予定である。
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