本研究課題では、仮想現実(Virtual Reality: VR)技術、特に近年急速な発達を遂げている拡張現実(Augmented Reality: AR)技術に着目し、この技術を用いて心停止徴候認識能力向上のための教育システムの開発を試みた。このシステムはスマートフォン用アプリケーションとして株式会社Gugenka(新潟市)と共同で開発した。開発環境はUnity(Unity Technologies)で、開発に使用した外部ProjectはMixed Reality Toolkit(Microsoft Corporation)である。対応オペレーションシステムはiOS(Apple Inc.)とし、iPhoneまたはiPad上で使用可能とした。アプリ上に登場する傷病者は、模擬傷病者役が演じた動作をモーションキャプチャーで記録し、三次元コンピュータグラフィックス(3DCG)を制作した。死戦期呼吸時にみられる下顎の特徴的な動き5)に関しては実際の傷病者の映像を参考に3DCGを制作した。 任意の場所に心停止傷病者のアバターを出現させ、救助者は目の前で倒れたアバターの反応の確認を行なった後、119番をタップする。続いて、呼吸を確認すると傷病者アバターは死戦期呼吸を呈しており、その動きを見て使用者は「正常な呼吸か否か」を評価する(図2)。「正常な呼吸がない」と判断すれば直ちに100~120回/分のテンポでスマホ画面をタップし、胸骨圧迫を実践する(図3)。続いてAEDを字幕のガイダンス通りに操作する(図4)。電気ショック後は、直ちに胸骨圧迫を再開するという一連の流れを実践できるよう製作した。さらに各行為を実施する前に知識を確認するクイズを挿入した。
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