本研究の目的は,東京圏でプライマリ・ケアを実践するために必要な高度実践看護師のコンピテンシー・モデルを開発することである. 2022年度は,東京圏の訪問看護師5名に対してコンピテンシー尺度原案(6領域46項目)の必要性や重要性に関する半構造的面接調査を実施し,その結果から高度実践看護師のコンピテンシーの内容的妥当性について検討した.コンピテンシー46項目のうち,類似するコンピテンシーを統合した.さらに,高度実践看護師のコンピテンシーとして相応しい文言に修正した.新たに,6項目のコンピテンシーも追加した.最終的に,6領域48項目のコンピテンシー尺度を設定した.その人らしい療養生活を可能な限り居宅で支え続けるために,高度実践看護師が具備すべきコンピテンシーの洗練化につながった. 本研究では,主に5つの成果をあげることができた.①プライマリ・ケアに貢献している高度実践看護師に関する海外の先行研究を閲覧したのち,コンピテンシーについて検討した.②先行研究や本研究者による調査結果も踏まえて,プライマリ・ケア分野高度実践看護師が具備すべきコンピテンシー案を作成した.③コンピテンシー案を用いて,都市圏にある診療所・病院で訪問診療や往診に携わる医師または看護師,訪問看護師,高齢者施設に勤務する看護師に対して質問票調査を実施し,6領域46項目からなるコンピテンシー尺度を抽出した.尺度の信頼性と構成概念妥当性についても,統計分析手法を用いて確認した.④本研究の最終工程として訪問看護師の見解に基づき尺度の内容的妥当性について検討した結果,居宅医療現場のニーズや課題に対応できる高度実践看護師の具体的な形象として6領域48項目のコンピテンシー・モデルの開発に至った.⑤本研究の実施期間中において,学術雑誌に5編の論文が掲載されたほか,学術集会でも4つの演題を発表した.
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