研究課題
【背景】地球上の水は、そのほとんどが海水であり、人が利用可能な地下水や河川などの淡水は全体の約0.8%である。人類の生存と健康な生活のためには、ヒトの健康を害さない「安全な水」が必要不可欠であるが、UNICEFとWHOによる「水と衛生のための共同監視プログラム」(2015年)によると、世界人口70億人のうち約6億人が安全な飲料水を得られない状況である。そこで、「安全な水」の確保のため、元素による毒性を正確に把握し汚染状況に適した浄化が必要である。【目的】本研究において、元素汚染の現状調査のため開発途上国の飲用井戸水の元素網羅的解析を行った。先行研究において、ホウ素についてWHOの飲料水ガイドライン値:2.4mg/Lを超える高濃度汚染を確認している。米国環境保護庁(EPA)及び欧州消費者安全科学委員会(SCCS)によるとホウ素の発癌性に関する影響は十分に明らかではない。また、ホウ素に関して植物への生物学的作用は多く報告があるが、哺乳動物については十分に明らかではない。そのため、ホウ素について、慢性影響である発癌性の解明を目指した。【研究成果】2020年度は、2019年度に明らかになったホウ素による非癌細胞株の悪性形質転換促進能について、その機構を明らかにする検討を行なった。その結果、ホウ素によるSrc/MEK cascadeの活性化が悪性形質転換促進能に関与する事が明らかになった。さらに、皮膚及び気管支上皮細胞株を用いた検討から、ホウ素による悪性形質転換能に関する再現性が確認された。また、in vivoでの影響を検討する目的で、紫外線発癌モデルおよび自然発癌モデルマウスの確立を進めている。
3: やや遅れている
コロナ禍で業務量縮小のため、マウス発癌モデルの確立が予定より遅れている。そのため、来年度も引き続きモデル確立を行う。
2021年度では、ホウ素によるin vivo発癌に関する検討を開始する。2021年度も引き続き、下記に示すような、1)ホウ素の発癌性評価、2)飲用井戸水の網羅的元素濃度分析に関する研究を進める。1)ホウ素の発癌性評価:ホウ素による悪性形質転換促進について、発癌モデルマウスを用いた評価に引き続き取り組む。2)飲用井戸水の網羅的元素濃度分析および浄化法の検討:アジア地域ので採取された飲用井戸水の元素濃度を液体クロマトグラフィー誘導結合プラズマ質量分析法(LC-ICP-MS)にて測定する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件)
Environmental Health and Preventive Medicine
巻: 25 ページ: -
10.1186/s12199-020-00855-8
Environmental Research
巻: 188 ページ: 109770~109770
10.1016/j.envres.2020.109770
Environmental Pollution
巻: 266 ページ: 115094~115094
10.1016/j.envpol.2020.115094
Science of The Total Environment
巻: 744 ページ: 140830~140830
10.1016/j.scitotenv.2020.140830