世界で最も高齢化が進んでいる我が国の女性にとって、健康長寿と高齢期のwell-beingの実現は喫緊の課題である。近年、ステロイドホルモンの研究が抗加齢医学の分野で盛んに行われており、中でも加齢に伴う性ホルモンの低下が様々な疾患やQOLの障害と関連している可能性が示唆され、ホルモン産生を促進する機序の解明に注目が集まっている。 本研究では、山形県鶴岡市で実施している地域在住者コホートのデータを用いて、LC/MS/MS法を用いたステロイドホルモン代謝物の測定系の構築を目指す中で、高齢女性において重要な健康障害であるサルコぺニアや骨粗鬆症、動脈硬化、認知機能低下等の発症に重要な役割を担うとされる男性ホルモンおよびその中間代謝産物に着目し、加齢や加齢性疾患との関連について検討を深めた。その結果、閉経後女性における血中DHEAS値は年齢・BMI・生活習慣病・喫煙状況とは独立して、加齢・サルコペニアと負に関連することが示された他、高血圧の独立因子である可能性も示唆された。また、血中free T濃度と骨密度の関連についての検討では、年齢・BMI・喫煙習慣・飲酒習慣・身体活動量等の既知の骨粗鬆症リスク因子を調整した上でも、閉経後女性における血中free T濃度は骨密度と有意な正の関連を示し、その関連は同年代の男性に比してより強いことが示唆された。 今後も、ステロイドホルモン代謝物の測定系構築に向けて検討を続けるとともに、測定するステロイドホルモンやアウトカムとなる健康課題の幅を広げ、高齢女性の健康状態やQOLに関連する代謝プロファイルについて検討を進めたい。
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