研究課題/領域番号 |
19K19418
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
原 崇人 東邦大学, 薬学部, 助教 (90805681)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カドミウム / 血管内皮細胞 / デルマタン硫酸糖鎖 / プロテオグリカン / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
本研究は動脈硬化症の危険因子であるカドミウムによって,脂質プラーク形成を伴う動脈硬化を進展させるデルマタン硫酸糖鎖が伸長するかに着目し,培養血管内皮細胞を用いた検討を行った。 令和元年度は,まず,カドミウムが血管内皮細胞のデルマタン硫酸糖鎖を伸長させるか検討を行った。その結果,カドミウムは確かに内皮細胞が分泌するデルマタン硫酸糖鎖を増加させ,さらにその糖鎖長を伸長させることが明らかとなった。その一方で,デルマタン硫酸糖鎖を結合させたプロテオグリカンであるビグリカンのコアタンパク質発現に対してカドミウムは顕著な影響を及ぼさないことも明らかとなった。これらの結果は,カドミウムが糖鎖伸長機構を撹乱し,血管内皮細胞が分泌するデルマタン硫酸糖鎖を伸長させることを示唆するものである。 そこで,血管内皮細胞において発現するデルマタン硫酸糖鎖の伸長に関わる酵素のスクリーニングを行い,それらの酵素の発現にカドミウムが及ぼす影響を検討した。その結果,カドミウムの濃度および時間依存的にCHSY1(chondroitin sulfate synthase 1)のみ遺伝子およびタンパク質レベルで発現誘導されることが明らかとなった。また,デルマタン硫酸糖鎖と類似した構造的特徴を有するヘパラン硫酸糖鎖の伸長酵素についても同様の検討を行ったが,カドミウムによって顕著に発現が誘導される酵素は認められなかった。これは,カドミウムが血管内皮細胞において特異的にCHSY1の発現を誘導することでデルマタン硫酸糖鎖を伸長させることを示唆する結果である。 今年度の研究結果により本研究の作業仮説が盤石となったため,次年度以降は当初の予定通り標的酵素CHSY1の発現誘導に関わる細胞内シグナル伝達経路の解析に着手する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は実験系の構築や実験条件の検討事項も多くあったが,当初の予定通り作業仮説を盤石なものにするだけでなく,標的酵素の絞り込みも行うことができたことが大きい。また,次年度以降の予定に含まれているシグナル解析に割くことのできる時間をより多く捻出できたため研究計画に沿って順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ実験計画は順調に進んでいるため,これまでの計画通り研究を遂行する予定である。まずは血管内皮細胞においてカドミウムにより活性化されることが明らかとなっているシグナル伝達経路が,CHSY1の発現誘導に寄与するか選択的阻害剤や干渉RNA法を用いて検討を行う。 また,発現誘導されたCHSY1がカドミウムによる細胞傷害を修飾しうるかについても検討を行い,カドミウムによる血管毒性における本現象の重要性も明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(B-A)として,28,916円が発生した。年度末にシグナル解析用試薬の購入を予定したが,輸入に伴う納期の都合上購入を見送ったためである。当該試薬は今年度購入して実験を行う。
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