研究課題
アルコール代謝産物であるアセトアルデヒドの代謝に関わるALDH2(Aldehyde dehydrogenase 2)遺伝子のrs671多型(G>A)のAアレルには、アセトアルデヒド曝露量増加によって発がんリスクを上昇させる効果と飲酒行動を抑制し発がんリスクを低下させる効果が知られている。しかし、従来の疫学的検討はこれら2つの相反する効果を区別せずに評価してきた。申請者らは、これらを区別して評価できる「媒介分析」という手法を用いた5つの消化管がんの症例対照研究(頭頸部、食道、胃、小腸、大腸)により、各消化管がんにおけるALDH2が関連するアセトアルデヒド代謝の発がん効果(直接効果)とrs671多型のAアレルの飲酒行動を介した発がんへの保護的効果(間接効果)を区別して定量化した (Koyanagi YN. et al. Cancer Res. 2020)。結果として、飲酒は小腸を除く全ての消化管がんリスク増加と関連していたが、媒介分析により、rs671多型のAアレルの有意な直接効果は上部消化管においてのみ認められ、効果の大きさは臓器毎に異なることが示された(直接効果オッズ比 [95%信頼区間]:頭頸部 1.83 [1.43-2.36]、食道 21.15 [9.11-49.12]、胃 1.65 [1.38-1.96])。一方で、有意な間接効果は小腸を除く全てのがん種で認められた。さらに、同様の解析を膵臓がん症例対照研究において行った結果、rs671多型のAアレルは膵臓がんリスクを上昇させる発がん効果を持つ一方で、飲酒行動の抑制を介し膵臓がん発がんへの保護的効果を併せ持つことが明らかになった(Koyanagi YN. et al. Cancer Sci. 2022)。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Cancer Science
巻: 113 ページ: 1441-1450
10.1111/cas.15286