研究課題/領域番号 |
19K19427
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
梅田 薫 (中田薫) 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (90332444)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / 新型エンテロトキシン / ブドウ球菌食中毒 / 全ゲノム解析 / サンドイッチELISA / RPLA法 |
研究実績の概要 |
1.エンテロトキシン遺伝子クラスター2にコードされた新型SEsの食中毒起因性を明らかにした。サンドイッチELISA法を用いて、2014年に発生したブドウ球菌食中毒事例由来菌株の新型SEs産生性および食品残品中に含まれる新型SEs量を測定した。食中毒由来菌株はすべて、高い新型SEs産生性を示した。食品残品の1つである寿司からは、食中毒を引き起こすのに十分な新型SEs量が検出された。次世代シーケンサーを用いて分離株の全ゲノム解析を実施した結果、エンテロトキシン遺伝子クラスター2周辺の遺伝子構造はSequence Type 45に属する菌に特異的であることが分かった。 2.工場で炊飯された米飯の細菌汚染および食中毒リスクを調査した結果,35℃での保存試験に伴って生菌数が経時的に著しく増加した.米飯への接種試験により,経時的な菌の増殖と米飯中のエンテロトキシン産生が確認された.また,今回の保存試験の条件下では,米飯に添加されたpH調整剤の明確な静菌作用は認められなかった.pH調整剤の有無に関わらず,期限内の米飯であっても取り扱いを誤れば,大規模な食中毒に発展する可能性があることが分かった. 3.1.の研究においてエンテロトキシン産生を確認したサンドイッチELISA法は感度、特異性ともに高く、優れた方法である。一方、地方衛生研究所や保健所検査室で実施する食中毒検査においては、複雑な手技や測定機器を必要としない逆受身ラテックス凝集反応法(RPLA法)が一般的に用いられている。しかし現在、市販されているのは従来型A型~E型エンテロトキシン検出RPLA法のみであり、新型エンテロトキシンの検査に対応したRPLA法は存在しない。新型エンテロトキシンを検出するRPLA法構築のため、市販のポリクローナル抗体およびラテックスパーティクルを用いた予備実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」1.で述べた、新型エンテロトキシンによる食中毒事件の検証についての成果は、新規性が高く、本科研費研究の主目的にあたる。得られた成果を学術論文、学会発表、依頼講演および、大阪健康安全基盤研究所HP上で公表することができた。2.で述べた工場で炊飯された米飯の細菌汚染についても新規性の高いものであり、さらに消費者の食の安全に大きく寄与する成果である。これも得られた成果を学術論文、学会発表として公表することができた。3.で述べた新型エンテロトキシンを検出するRPLA法の構築が計画よりも遅れている点が課題であるが、他の研究および成果報告については順調に進行してきた。よって、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、新型エンテロトキシン産生を確認したサンドイッチELISA法は感度、特異性ともに高く、食中毒検査に適している。一方、地方衛生研究所や保健所検査室で行政が実施する食中毒検査においては、複雑な手技や測定機器を必要としない逆受身ラテックス凝集反応法(RPLA法)がブドウ球菌エンテロトキシンの検出法として一般的に用いられている。 現在、市販されているのは従来型A型~E型エンテロトキシン検出RPLA法のみであるため、新たに新型エンテロトキシンを検出できるRPLA法を構築する。 昨年度までにG型エンテロトキシン検出RPLA法について何度か予備実験を行い、大まかな方法は確立している。今年度は主に最適な試薬調整量などの細部の条件検討を行い、感度、特異性を確認する。また、方法が確立したのちに、食中毒事例由来菌株や食品残品を用いた検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、「今後の研究の推進方策」の項で述べた新型エンテロトキシンを検出することができるRPLA法に関する予備実験を、使用する試薬や濃度等の条件を変化させつつ行い、最適な条件を決定する予定であった。しかし、試薬類(抗体、ラテックスパーティクルなど)が想定していたよりも高価であったため、一度に多くの試薬類をそろえて条件検討を行うことができず、1つずつ順次購入して検討する方法に変更した。また、試薬類はほとんどが海外で生産されるものであり、欠品や納期遅れなどがしばしば発生したことから、昨年度中に最適な条件を決定することができなかった。また、令和4年10月~11月に研究所施設移転があり、その間は実験を行うことができなかったことも使用計画が遅れた要因である。今年度の直接経費の主な使用計画は、RPLA法に関する条件検討のための試薬類(抗体、ラテックスパーティクルなど)の購入と、得られた成果の学会発表および論文発表費用である。
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