労働時間や職場風土と従業員の健康・生産性との関連：職場外要因を含めた複合的検討

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K19439
• 研究機関: 神奈川県立保健福祉大学
• 研究代表者: 津野 香奈美 神奈川県立保健福祉大学, ヘルスイノベーション研究科, 講師 (30713309)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 精神保健 / 労働者

研究実績の概要

本研究は、労働時間とインシビリティ（礼節の欠如）の2つの職場内要因、家事・育児等の職場外要因の両方に着目し、医療機関で働く労働者約3,000名を対象に、これらが精神的健康、身体的健康、および医療安全を含む労働生産性にもたらす影響を複合的に解明する前向きコホート研究を多施設で実施することにより、我が国の労働者における精神的及び身体的不調の未然防止と、職場の安全構築に貢献することを目的とするものである。
本年度は、関西地方の公立大学法人に勤務する職員3,000名を対象に実施した縦断調査データを用い、上司や同僚から受けたインシビリティや自分自身が周囲に対して行ったインシビリティが抑うつ症状と関連しているかを縦断的に検討した。
相関分析の結果、職場のインシビリティと1年後の抑うつ症状とは有意な正の関連を示した。ロジスティック回帰分析の結果も同様であり、性別、年齢、職種調整後も結果に大きな変化は見られなかった。このことから、職場において礼節が欠如した言動を受けること、また自分自身が他人にそういった言動を行うことは、将来の抑うつ症状と関連することが示唆された。本研究課題に関し、第92回日本産業衛生学会、第25回日本行動医学会、及び第30回日本疫学会において学会発表、またInt Arch Occup Environ Healthに論文発表を行った。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

縦断調査データが既に得られており、身体健康を示す健診データについても提供を受けている。今後は連結データセットを作成し、さらに解析を進める予定である。
本年度実施予定だった一部の調査については、新型コロナウイルス感染症の影響で調査先の都合により中止せざるを得なかったが、次年度には実施できる予定である。

今後の研究の推進方策

現在、夏～秋の実施を目指した大規模インターネット調査の準備を進めている。また、本年度実施できなかった調査についても、調査先の受け入れ態勢が整い次第実施できる見込みである。

次年度使用額が生じた理由

本年度実施予定だった調査が新型コロナウイルス感染症の影響で実施できず、次年度に繰り越すことにしたため。

研究成果

• [国際共同研究] Harvard School of Public Health(米国)
  • 国名: 米国
  • 外国機関名: Harvard School of Public Health
• [国際共同研究] World Health Organization/International Labour Organization(スイス)
  • 国名: スイス
  • 外国機関名: World Health Organization/International Labour Organization
• [国際共同研究] University of Copenhagen(デンマーク)
  • 国名: デンマーク
  • 外国機関名: University of Copenhagen
• [国際共同研究] IIS-Princesa(スペイン)
  • 国名: スペイン
  • 外国機関名: IIS-Princesa
• [国際共同研究] Dusseldorf University(ドイツ)
  • 国名: ドイツ
  • 外国機関名: Dusseldorf University
• [国際共同研究]
  • 他の国数: 3
• [雑誌論文] Occupational Differences in C-Reactive Protein Among Working-age Adults in South Korea (2020)
  • 著者名/発表者名: Kim Y, Zaitsu M, Tsuno K, Li X, Lee S, Jang SN, Kawachi I
  • 雑誌名: J Occup Environ Med 巻: 62 ページ: 194-201
  • DOI: 10.1097/JOM.0000000000001781
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] The Association between Unit-level Workplace Social Capital and Intention to Leave Among Employees in Health Care Settings: A Cross-sectional Multi-level Study (2020)
  • 著者名/発表者名: 6)Iida M, Watanabe K, Ando E, Tsuno K, Inoue A, Kurioka S, Kawakami N
  • 雑誌名: J Occup Environ Med 巻: 62 ページ: e186-e191
  • DOI: 10.1097/JOM.0000000000001847
  • 査読あり
• [雑誌論文] WHO/ILO work-related burden of disease and injury: Protocol for systematic reviews of exposure to long working hours and of the effect of exposure to long working hours on depression (2019)
  • 著者名/発表者名: Rugulies R, Ando E, Ayuso-Mateos JL, Bonafede M, Cabello M, Di Tecco C, Dragano N, Durand-Moreau Q, Eguchi H, Gao J, Garde AH, Iavicoli S, Ivanov ID, Leppink N, Madsen IEH, Pega F, Pruss-Ustun AM, Rondinone BM, Sorensen K, Tsuno K, Ujita Y, Zadow A.
  • 雑誌名: Environ Int 巻: 125 ページ: 515-528
  • DOI: 10.1016/j.envint.2018.11.011
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Long working hours and depressive symptoms: moderating effects of gender, socioeconomic status, and job resources (2019)
  • 著者名/発表者名: Tsuno K, Kawachi I, Inoue A, Nakai S, Tanigaki T, Nagatomi H, Kawakami N; JSTRESS Group
  • 雑誌名: Int Arch Occup Environ Health 巻: 92 ページ: 661-672
  • DOI: 10.1007/s00420-019-01401-y
  • 査読あり
• [雑誌論文] Association between psychosocial factors at work and health outcomes after retirement: a protocol for a systematic review and meta-analysis (2019)
  • 著者名/発表者名: Imamura K, Tsutsumi A, Asai Y, Arima H, Ando E, Inoue A, Inoue R, Iwanaga M, Eguchi H, Otsuka Y, Kobayashi Y, Sakuraya A, Sasaki N, Tsuno K, Hino A, Watanabe K, Shimazu A, Kawakami N
  • 雑誌名: BMJ Open 巻: 9 ページ: e030773
  • DOI: 10.1136/bmjopen-2019-030773
  • 査読あり
• [学会発表] 職場における礼節の欠如は1年後の抑うつ症状と関連する：某大学法人における前向きコホート研究 (2020)
  • 著者名/発表者名: 津野香奈美，山本眞弘，辻あさみ
  • 学会等名: 第30回日本疫学会学術総会
• [学会発表] 保育者のストレス状況に関する横断調査 (2020)
  • 著者名/発表者名: 柳沼梢，津野香奈美，吉益光一，佐野裕子，前田有秀，仲井邦彦
  • 学会等名: 第90回日本衛生学会
• [学会発表] 職場の尊重度（シビリティ）尺度日本語版の信頼性・妥当性検証と属性別得点比較 (2019)
  • 著者名/発表者名: 津野香奈美，島津明人，島田恭子，安藤絵美子，井上彰臣，栗岡住子，川上憲人
  • 学会等名: 第92回日本産業衛生学会
• [学会発表] 職場のインシビリティ（礼節の欠如）と抑うつ症状との関連：前向きコホート研究 (2019)
  • 著者名/発表者名: 津野香奈美，山本眞弘，梅本秀俊，辻あさみ
  • 学会等名: 第27回日本産業ストレス学会
• [学会発表] LGBT等の性的マイノリティ労働者における暴力の経験と精神的健康状態 (2019)
  • 著者名/発表者名: 津野香奈美，大塚泰正，藤桂，松高由佳，飯田順子，堀口康太，島田恭子，遠藤寛子
  • 学会等名: 第26回日本行動医学会
• [図書] 職場の健康がみえる 産業保健の基礎と健康経営 (2019)
  • 著者名/発表者名: 医療情報科学研究所（編）
  • 総ページ数: 328
  • 出版者: 株式会社メディックメディア
  • ISBN: 4896327829