研究実績の概要 |
本研究の目的は、妊婦・乳幼児を持つ親におけるインフルエンザワクチン(以下、IV)接種の意思決定時または行動決定時の接種阻害要因を明らかにすることである。妊婦・乳幼児を持つ親は、仕事を持ち労働者として働く人も多い。国内でIV接種率の低い20-64歳の世代では就業者の割合が高く(男性:9割程度、女性:7,8割程度)、就労環境・個人の就労状況がIV接種行動に関連している可能性がある。しかし、就労者に焦点を当てて接種行動を検討した国内の報告は少なく、働く成人への接種促進の足掛かりのためにも就労状況とIV接種行動との関連を明らかにする必要が考えられた。そこで、家庭内感染・個人の罹患・重症化の予防に影響すると考えられる接種促進のために、就労状況とIV接種行動との関連を明らかにすることを目的に、入手可能な既存データの二次分析を行った。働く世代の人々はIV接種率が低く、その特性を明らかにするため、20-64歳1,308名を対象として就労状況とIV接種行動との関連を検討した。その結果、従業員数300人以上1000人未満の企業、官公庁などで、週に40時間の労働を行う規則的な就労状況の人では、自身の健康管理に配慮することができ、IV接種が行いやすいと考えられた。就労年数が長いと、会社で重要な役割を任され、就労時間が増え、自分の健康管理への配慮が疎かになる可能性があった。この研究成果は、令和2年度の国内学会(第79回日本公衆衛生学会)、国内雑誌(地域ケアリングvol23 No1, 64-67)にて発表済みである。 IV接種に影響する要因は、コロナワクチンの接種にもつながることが考えられ、接種阻害要因の検討は今後もますます重要になると考えられる。妊婦・乳幼児を持つ親のワクチンリテラシーを高めるための一歩として、必要な情報を得るための調査票を準備している。
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