2019年度の研究開始にあたりまずは研究体制の構築を行った。当施設のほかに藤田医科大学、東京大学、成田赤十字病院、京都大学、横浜市立大学との協力体制を構築した。当施設と各施設で症例登録に関する契約締結を行い、各施設の倫理委員会による研究に対する承認取得を進め、規約などの運営体制を整えた。また同時にデータ収集フォームとなるREDCapの利用手続きの契約を行い、入力フォームの構築を行った。その後実際の研究フローの構築をすすめ、各施設からリファレンス検査センターである藤田医科大学への菌株輸送フロー、各施設による情報入力方法を確立した。 その後さらに5施設がネットワークに加わり、2022年3月の時点で639株のカルバペネム耐性菌が各施設から収集された。菌株は各施設から藤田医科大学に輸送され、藤田医科大において最終的な薬剤感受性の検査を行いカルバペネム耐性の有無の確認を行っている。さらにカルバペネム耐性菌への感染/保菌が確定した患者については詳細な臨床情報の収集を開始した。10施設が50項目以上の診療情報の収集を行い、389例について臨床情報を収集を完了したため、臨床的予後、カルバペネム耐性菌の他の抗菌薬に対する薬剤感受性について学会発表を行った。日本国内におけるカルバペネム耐性腸内細菌目細菌の30日死亡率は30%、カルバペネム耐性非発酵菌の死亡率は21.8%に上るため患者に与える影響が大きいという実態を明らかにした。また腸内細菌目細菌、非発酵菌ともにアミノグリコシド系抗菌薬の感受性がよいため、治療のオプションとなりえると考えられた。
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