本邦の疾患レジストリと、レセプト情報・特定健診情報等のデータを解析して、近年の「2型糖尿病診断時点における網膜症の有病率」や「2型糖尿病診断からの期間」ごとの網膜症の累積罹患率を推定し、それらの値を用いて本邦における平均的な「2型糖尿病発症から診断までの期間」を推定すること、期間の予測因子について調べることが、本研究の最も重要な部分である。 レセプトを用いた研究については、JMDC Claims Databaseを用いて、合計4つの解析を行った。新規処方患者、既存処方患者に分けて、処方のフォロー開始日から網膜症、足切断の罹患率を算出した研究については、 Diabetology Internationalに出版された。次に、本研究課題の中心である、前の研究より細かくコホートを類型化して、健診で糖尿病が診断された群と糖尿病の診断とほぼ同時に処方が開始された群の間で網膜症発症の差を調べる研究では、後者のほうが網膜症発症を多く認め、診断の形で診断前の有病期間に差があることが示唆された(本研究は投稿後査読対応中)。糖尿病に関する診断と同時に処方が開始された患者において、糖尿病受診中断が血糖悪化に及ぼす影響についての論文は、Journal of Diabetes Investigationに出版された。健診受診で糖尿病発症を指摘された後の受診行動に関連する因子についても、Journal of Diabetes Investigationに出版された。 疾患レジストリについては、J-DREAMSのデータを使用して、糖尿病の診断時期と、眼科受診時の網膜症の所見を用いて、糖尿病の診断からの経過時間と網膜症発症の関連を、糖尿病の診断契機別に調べた。
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