研究課題/領域番号 |
19K19452
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
大川 純代 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 疫学統計部研究員 (50747673)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | がん登録 / がん診療連携拠点病院 / 診療実績 / ホスピタルボリューム / 生存率 / 医療の均てん化 |
研究実績の概要 |
がん診療連携拠点病院(拠点病院)制度は、国民が居住地域に関わらず標準的な医療を受けられること(がん医療の均てん化)を目指している。大阪府内には64のがん拠点病院があるが(2019年4月現在)、診療機能の実態把握は十分ではない。本研究は、がん医療に関する既存統計データを用いて、がん医療の均てん化に注目して拠点病院制度を評価する。 診療機能を測定する代理指標として診療実績数(Hospital volume)を用い、がん患者の5年生存率との関連性を分析した。具体的には、大阪府がん登録情報より、2007年から2011年に胃、大腸、肺、乳房、子宮がんの診断を受け、府内の医療施設で観血的処置(外科的・鏡視下・内視鏡的治療)を受けた15歳から99歳までの患者を対象とした。がんの部位別、病院別に患者を集約し、患者数の四分位をもとに病院をHigh, Medium, Low, Very Low volumeの4グループに分類した。 患者背景を調整したコックス比例ハザード分析の結果、Very low volumeの病院で治療を受けた患者は、High volume の病院で治療を受けた患者に比べると、死亡リスクが有意に高かった。これは、がん5部位に共通していた。一方、hospital volumeと死亡リスクの関連性の強さは、がんの部位によって異なっていた。Very low volumeとHigh volumeの病院の生存率の差は、乳房・子宮がんでは2-3%ポイントだったが、胃・大腸・肺がんでは10-15%ポイントの開きがあった。 研究結果より、診療実施数の小さい病院から大きい病院への患者の集約化が、がん患者の生存率の向上に貢献する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、大阪府がん登録のデータベースを分析用に整備した。また、本研究課題全体の基礎研究として、診療実績数と生存率の関連性について成果をまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究結果をふまえ、大阪府内のがん診療連携拠点病院の診療実績に注目した研究を進める。具体的には、拠点病院制度の導入前後の診療実績数、生存率、その関連性の推移について分析する。また、がん診療連携拠点病院の指定要件には1年間に実施すべき手術件数が規定されているが、この基準が患者の生存率に対応した妥当なものであるかを分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】他の仕事との日程が重なり、参加できなかった国内学会があった。また研究協力者が国外にいたため、研究打ち合わせの際の交通費を使用しなかった。 【使用計画】データ量が大きく、計算に時間を要するため、高性能デスクトップパソコンを購入して作業の効率化を図る。
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