研究実績の概要 |
小児の成長や体格の推移を評価するため、小学校6年間、および中学校3年間の学校健診記録の転記による調査を実施した。小児の肥満度は体重と身長からローレル指数(kg/m3)を算出して145を超えた場合「肥満傾向あり」と定義した。小学校から中学校までの9年間の肥満傾向の割合は、小学校1年生で2676名中492名(18.4%)と最も高く、中学校2年生で1516名中171名(11.3%)と最も低かった。胎児期のフタル酸エステル類代謝物の曝露の影響を検討するために、ロジスティック回帰分析を実施した。従属変数は小学校6年間および中学校3年間の肥満傾向、独立変数はフタル酸エステル代謝物濃度、共変量の母の年齢、母の妊娠前肥満、母の学歴、健診日の児の月齢、および児の性別を用いた。検出率が80%以上であったMnBP、MiBP、MEHPおよびMECPPを対数変換した後に曝露として解析に用いた。結果では、母体血中MiBP濃度が高いほど小学校6年生の肥満傾向が有意に低下 (OR = 95%CI: 0.84 (0.71, 0.98))、一方で、母体血中MEHP濃度が高いほど小学校6年生の肥満傾向の割合が有意に増加した(OR = 95%CI: 1.08 (1.00, 1.17)))。しかし、他の学年の肥満傾向の割合とフタル酸エステル代謝物とは関連が認められなかった。有意な関連は小学校6年生のみで、影響の方向が一致しなかったため、フタル酸エステル代謝物曝露と小児肥満は強くは関連しないことが示された。さらに、臍帯血中メタボローム解析を用いて、フタル酸エステル代謝物の曝露がどの程度、小児肥満や脂質代謝に影響するか明らかにする。
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