研究課題/領域番号 |
19K19454
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯高 世子 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80800680)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 変形性股関節症 / 骨粗鬆症 / サルコペニア / 要介護 / コホート |
研究実績の概要 |
運動器疾患による要介護予防を目的とした大規模住民コホート研究Research on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability (ROAD)において、高齢者の歩行能力に強く影響する大腿部の3疾患[大腿骨頚部骨粗鬆症 (FNOP)、変形性股関節症 (股関節OA)、大腿四頭筋サルコペニア (SP)]の相互関係、3疾患の合併に影響を及ぼす危険因子、3疾患の合併による要介護の発生と予後への影響を解明することを目的として本研究を開始した。 事前準備として、2018年度に山村部における943名(男性312名、女性631名)の追跡調査を完了した。本追跡調査では、骨密度、X線、握力、大腿四頭筋筋力、筋量、歩行速度測定の他に、問診票調査、ロコモ25、栄養調査 (BDHQ)、整形外科専門医による臨床情報、血液・尿検査などの多岐にわたる調査を実施し、研究1年目の2019年度には、ROADスタディの漁村部でのコホート追跡調査を実施し、山村部で行った上記と同様の調査を行い、調査を行い得た人数の合計は1,443名(男性456名、女性987名)であった。研究2年目である2020年度は、第5回調査の結果からFNOPはWHO分類、股関節OAはKellgren Lawrence (KL)分類、SPはAsian Working Group for Sarcopenia (AWGS)の基準 (2019)を用いて診断を行った。大腿四頭筋SPは大腿四頭筋筋力・筋量の値を抽出した。さらに、データ入力を行い、過去3回分の膨大なデータとのデタリンケージを行い、10年間の大腿部運動器疾患縦断データベースを完成させた。2021年度は、完成した縦断データベースを用いて、まず股関節OA、FNOP、SPの発生率を算出し、それぞれの疾患の発生に対する相互関係を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ROADスタディの第2回調査(本研究のベースライン調査)から第5回調査までの縦断データベースを用いて、まず各疾患の発生率の解析を行った。ROADスタディ第2回調査の山村漁村コホートの参加者の内、ベースラインの第2回調査、4年後の第3回調査、7年後の第4回調査、10年後の第5回調査のいずれかに参加した男女1,550名(男性522名、女性1,028名、平均年齢65.8歳)を対象とした。ベースラインにて、両股関節KL 0/1であり、追跡調査にてどちらか一方でもKL 2以上となったものを股関節OA発生とし、FNOP、SPに関してもベースラインにて疾患を有していなかったものが、追跡調査にて新たに診断されたものを疾患の発生とした。それぞれの発生率は人年法を用いて算出した。FNOPの発生率は13.4/1000人年(男性6.1/1000人年、女性17.8/1000人年)であり、股関節OAの発生率は5.8/1000人年(男性6.9/1000人年、女性5.3/1000人年)、SPの発生率は15.6/1000人年(男性17.8/1000人年、女性14.5/1000人年)であった。それぞれの疾患の発生の有無に対する相互関係を解析するため、年齢、性別、体格指数(BMI)、居住地域で補正した上でCox回帰分析を行った。FNOP発生に対してベースラインにおける股関節OAの存在はリスクを下げる傾向にあった(ハザード比0.54, 95%信頼区間0.32-0.87)。股関節OA発生に対してベースラインにおけるSPの存在はリスクを下げる傾向にあったが、こちらは股関節OA発生者の中にベースラインにおけるSPであった人数が0名であったため、今後さらに追跡調査を行い解析が必要と考える。SP発生に対してFNOP、股関節OAは有意な関連はなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、ROADスタディの予後調査を実施する。完了した後は、14年間 (第2回から予後調査)の追跡による予後調査の結果と、過去10年間におよぶ縦断データベースを連結させる。完成したデータベースを用いて、FNOP、股関節OA、大腿四頭筋SPそれぞれの合併の有無が要介護の発生と予後へどのように影響するかを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由)COVID-19の影響によりすべての学会がオンライン開催となり、旅費などの支出がなく、次年度使用額が生じた。 使用計画)17年目のROAD全対象者への予後調査の準備を開始するにあたり、参加人数が増加したことによる費用が発生するため、次年度に使用する。 本研究計画全体の進捗に変更はない。
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