研究実績の概要 |
本研究では、地域住民からなるコホート研究追跡調査から、高齢者の歩行能力に強く影響する大腿部の3疾患[大腿骨頚部骨粗鬆症 (FNOP)、変形性股関節症 (股関節OA)、大腿四頭筋サルコペニア (SP)]の相互関連および要支援・要介護との関連を明らかにした。 我々は、運動器疾患による要介護予防を目的に、一般住民からなる大規模住民コホートROADを2005年に構築し、ベースライン調査、3、7、10、13年後の追跡調査まで完了している。 本研究では、まず第2回調査の参加者のうち、大腿骨頚部の骨密度検査、股関節X線検査、筋量検査、すべて行い得た参加者1,551名 (男性522名、女性1,029名)を対象とし、FNOP、股関節OA、SPの発生率を算出した。FNOPの発生率は13.4/1000人年であり、股関節OAの発生率は5.8/1000人年、SPの発生率は15.6/1000人年であった。それぞれの疾患の発生に対する相互関連を解析したところ、股関節OAの存在はFNOP発生に対してリスクを下げる傾向にあった(ハザード比0.54)。SP発生に対してFNOP、股関節OAは有意な関連はなかった。次に、診断基準がまだ明らかでない大腿四頭筋SPに関して、全身SPを目的変数に、大腿四頭筋筋力を説明変数に、男女別にROC解析を行い、カットオフ値を算出し、大腿四頭筋筋力SPの有病率は33.3%と推定した。大腿部の3疾患の相互関連を解析したところ、大腿四頭筋SPはFNOP(オッズ比 2.14)、股関節OA(オッズ比 1.74)と有意な関連があった。さらに要支援・要介護の発生と大腿部の3疾患との関連を解析したところ、大腿四頭筋SP(ハザード比2.94)の存在は要支援・要介護の発生リスクを有意に上げていることが示唆された。
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