研究実績の概要 |
福島県内における脳卒中の発症状況について、平成25年1月1日から平成25年12月31日の発症例に26医療機関から総計9,447件の採録を行った。脳卒中診断基準によって、3,992件を除外したため、登録対象は総計5,455件(確実4,627件、可能性828件)であった。脳卒中の病型分類別では、脳梗塞が3,793件(69.5%)、脳内出血が1,277件(23.4%)、くも膜下出血が378件(6.9%)、その他の脳卒中が7件(0.1%)であった。再発者は1,424件で登録件数全体の約1/4(26.1%)を占めた。登録対象のうち、死亡は879件(16.1%)であった。震災の影響をみるために、避難区域等12市町村、中通り、会津、浜通りの4つの地域別に脳卒中の年齢調整発症率(10万人あたり)を算出した結果、発症率はそれぞれ、108.3、119.5、125.9、107.7であり、会津、中通り、避難区域等12市町村、浜通りの順で発症率が高かった。この傾向は、脳梗塞、脳内出血においては同様の傾向であったが、くも膜下出血については、中通り、浜通り、会津、避難区域等12市町村の順であったことが明らかとなった。これらのデータをもとにして引き続き、震災後の生活習慣、身体的因子、心理社会因子と発症の寒冷についての解析を進めていくことに加え、平成30年1月1日から平成30年12月31日までの期間を対象として、平成25年と同じ方法で同じ対象に対してフォローのための発症登録を引き続き行っている。平成25年の本調査では、避難区域等12市町村における発症率は他の地域と比較して明らかな差はみられなかった。これまでの県民健康調査では、震災後に避難された住民では、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常、メタボリックシンドロームを新たに発症した者の割合が有意に多かった。したがって、避難区域住民は今後脳卒中、心筋梗塞等の発症が増加する可能性が懸念されるが、今回の調査は震災2年後の調査であり、まだその影響が出ていないと考えられる。
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