研究課題
岩手県花巻市大迫町で実施される健康フロンティア事業を継続し、その一環である家庭血圧測定事業により、本年度対象地区である外川目の住民の家庭血圧データを収集した。併せて、その際に配布される質問票により、性別、年齢、飲酒・喫煙状況、体重(自己測定)、現病歴・既往歴、降圧治療状況やその他服用薬剤に関する情報を収集した。これら家庭血圧測定者を対象に、令和元年9月には、耐糖能検診を実施した。令和元年11月~令和2年2月には、MRI検診を実施した。特に、MRI検診では、頸動脈超音波検査、脈波伝播速度、心電図、血液・尿検査のほか、頭部MRI撮影および認知機能検査であるミニメンタルステート検査が実施され、循環器疾患および認知機能に関わる詳細な情報が収集された。また、これら検診時に採血が実施されるとともに保存血清が収集されるため、それらを利用して甲状腺機能の指標である甲状腺刺激ホルモン(TSH)ならびに遊離サイロキシン(Free T4)を測定した。その結果、これまで106名よりTSHおよびFree T4のデータを収集できた。TSHおよびFree T4の平均値(中央値)はそれぞれ、2.50(1.94)μIU/mLおよび1.24(1.23)ng/dLであり、ほぼ正常範囲の集団が集まっていると考えられた。現在、これらの情報のデータセット化、ならびに、甲状腺機能と家庭血圧および認知機能との関連を検討している。
2: おおむね順調に進展している
本年度、予定通りに対象地区住民の家庭血圧情報、甲状腺機能検査データ(TSHとFree T4)、およびその他臨床情報を収集出来ている。甲状腺機能の分布も解析しており、ほぼ正常範囲であることを確認している。このことから、今後の検討事項である、甲状腺機能と各種血圧指標および認知機能との関連を解析できる見通しが立っている。
昨年度と同様に、大迫コホート研究の継続調査を行う。併せて、大迫コホート研究で蓄積された保存血清・血漿を用いて過去の甲状腺機能を測定し、現在作成中の甲状腺機能のデータセットと分布に偏りがないかを確認する。保存血清を用いた甲状腺機能検査に問題がなければ、より多数の保存血液検体についても甲状腺機能を測定し、また令和元年度に得られたデータ、および令和2年度のデータをもとに甲状腺機能と家庭血圧および血圧日間変動との関連を統計解析で明らかにする予定である。さらには、甲状血圧指標と認知機能との関連の中間因子として、脳萎縮や脳血管障害の影響が考えられることから、そのメカニズムの解明として、甲状腺機能と脳萎縮度、脳卒中発症、および無症候性脳血管障害との関連についても将来的に検討する予定である。それに向けて、脳MRI画像解析を進めるとともに予後情報の追加収集を行う。
本年度は、既存データの解析、整理を行った。次年度以降での甲状腺機能検査、データ整備、データ解析および学会発表・論文作成等を実施する予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
日本循環器病予防学会誌
巻: 54 ページ: 163-170
大崎市民病院誌
巻: 23 ページ: 42-45