研究課題/領域番号 |
19K19466
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
高畠 恭介 東北医科薬科大学, 医学部, 非常勤講師 (10826861)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 甲状腺 / 疫学 / 内分泌 / 血圧 / 認知機能 / 認知症 |
研究実績の概要 |
本研究では、岩手県花巻市大迫町で実施される健康づくりフロンティア事業の参加者のうち研究同意者のデータを利用している。本年度は、新型コロナウイルス感染症対策のため例年の測定項目のうち、家庭血圧測定、脳MRI検査、動脈硬化検査、および心電図測定など概ね基本的な検査のみが実施された。感染対策のために県外スタッフの当該事業への参加が困難であったため、採血検査や認知機能検査は見送られることとなった。しかしながら、本年度では205名の家庭血圧測定、および137名の脳MRI撮影等の検査が行われ、そのうち研究参加同意者に絞ったデータセット作成が進行中である。他方で、甲状腺刺激ホルモン(TSH)ならびに遊離サイロキシン(Free T4)を測定した者のうち、84名について甲状腺機能と各種血圧指標データとの関連を解析した。性別、年齢(65歳以上/未満)、または降圧薬使用の有無で層別した線形解析では、TSHまたはFree T4と早朝家庭血圧および血圧日間変動との有意な関連は検出できなかった。一方、調整項目として年齢、性別、および降圧薬の内服の有無を調整した線形解析により、TSHと検診時血圧の負の関連を示唆する結果が得られた。このことから、TSH低値は白衣効果と関連する可能性が考えられる。一方、TSHとFT4の比や、TSHとFT4の両指標に基づく4分類(中央値以上/未満)と検診時血圧または白衣効果(健診時血圧と家庭血圧の差)の有意な関連は認められなかった。追加データ収集のうえで、非線形関係の検出など他の解析モデルを利用した解析が必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度得られたデータセットを用い、データ分布の確認や横断解析による関連の方向性の確認など、研究成果につながる情報が得られた。しかし、調査先機関の新型コロナウイルス感染予防対策が想定より厳格であり、予定としていた調査の一部を実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
感染対策に十分留意しながら大迫コホート研究の継続調査を行い、追加の甲状腺機能データ、家庭血圧データ、認知機能データ、およびその他交絡要因となりうる臨床データを収集する。併せて、大迫コホート研究で蓄積された保存血清・血漿を用いて過去の甲状腺機能を測定し、継続調査と保存血清を用いた追加検査でえられた甲状腺機能データの分布を比較する。分布に問題がなければ、得られた全ての甲状腺機能データを統合し、甲状腺機能と家庭血圧指標および血圧日間変動との関連を統計解析で明らかにする。さらには、甲状腺機能、血圧指標、認知機能との関連のメカニズム解明のため、脳萎縮度、脳卒中発症、および無症候性脳血管障害データの追加収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に続き、新型コロナウイルス感染症対策によって調査先の岩手県に県外スタッフが調査に携わることが困難であった。そのため、次年度使用額が生じたが、次年度には全面的にデータ収集が再開する見込みであり、その際に当該研究費を使用する。
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