研究課題/領域番号 |
19K19468
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
大西 一成 聖路加国際大学, 専門職大学院公衆衛生学研究科(公衆衛生大学院), 准教授 (50596278)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 健康予測 / 大気汚染物質 / 黄砂 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究は、大気汚染の地元または越境由来の濃度と健康影響との関連を精査し、エアロゾル数値モデルによって計算した飛来予測濃度データと併せて健康評価を行うことによって予報システムの構築へつなげるものである。初年度においては、過去の2013年~2015年の自覚症状データ及び黄砂、硫酸塩、ブラックーボン、オーガニックカーボンの数値モデル値を算出し、lidar値の黄砂(dust非球形)と汚染物質(spherical球形)の観測値、気候データを用いて線形回帰、ロジスティック回帰を用いて解析を実施した。黄砂予測値と鼻、喉、発熱との関係が強く、硫酸塩予測値と目、呼吸器との関係が強かった。 症状と観測値のspherical球形との関係はあまり見られなかったが、dustによる調整を外すと関連が強くなった。そのため、dustによる交絡があることが判断される。黄砂は粒径も大きく、濃度が高くなるため症状への影響が強いと考え、越境大気疎遠物質のうち黄砂による健康影響の大きさを重要視し、黄砂予測と健康との関係を中心に探る重要性がある。また、黄砂に付着した汚染物質との相互関係にも着目する。 今年度は、黄砂の主成分である重金属の観測データと、金属成分のモデルシミュレーションのデータの一致についての論文が、シミュレーション開発の気象研究所で執筆されScientific reportで出版され、合同プレスリリースを実施した。 環境データの整合性が報告されたので、次は本研究で健康データとの関係を報告する予定である。また、10年程度の感覚で日本へ比較的高濃度の黄砂が飛来していることについて、取材協力し、一般への啓発に貢献した。引き続き、日本における地元由来汚染(車)、黄砂(越境)、硫酸(越境)、カーボン(越境)という発生源を加味しながら自覚症状を上昇させるリスク評価を実施し予測構築を行い、予防行動へつなげる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で分析した、観測金属成分とシミュレーション数値モデルの整合性が明らかとなり、論文発表、合同プレスリリースを行った。 機器の不具合(電圧低下)により、データが取得できてない期間があったが、近隣地域のバックアップデータによって、本研究への影響は少なかった。 本研究のコロナ渦における影響としては、東京都のアンケート調査のリクルートや対面による説明の実施ができていないことであるが、これまでのデータによって解析を行った。また、大気汚染物質とマスク着用による予防行動の効果に関する評価は、大気汚染飛来に関わらずマスクを常時着用する社会になったため、新たな着用状況の把握を行うことはできなかったが、マスク着用時の漏れ率に関してデータをまとめ、メディアを通じて国民へ発信し一般社会へ強い波及効果があった。大気汚染物質やウイルス・細菌は、同じ科学的原理でマスクによって捕集するためコロナ渦へ応用することができた。
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今後の研究の推進方策 |
観測データと予測データの整合性が明らかとなったので、次のステップとして健康データとの関係を明らかにする。アンケートデータの新たな取得は困難であるため、過去の症状データを精査して、シミュレーションモデルデータと健康データの関係、特に日本では酸化能のある重金属を多く含む黄砂イベントによる影響が強いと考えられるので、黄砂予測と症状とについて一定の見解を得たいと考える。 また、マスクの漏れ率(侵入率)や、着用時の飛沫拡散の知見については、一般社会からの要望が強いため、可能な範囲で追加実験を行い論文等で発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19パンデミックにより購入予定だった、バイオフリーザーの納期が今年度に間に合わなかった。また、旅費の執行ができなかったため、次年度使用額が生じた。 バイオフリーザーは、2021年度に購入する。また、データ解析関係にかかる費用と予防対策となるマスク効果の追加実験にかかる費用に使用する。
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