研究課題/領域番号 |
19K19473
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
武藤 諒子 (片桐諒子) 国立研究開発法人国立がん研究センター, 社会と健康研究センター, 室長 (60813508)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵がん / メンデルのランダム化解析 / 分岐鎖アミノ酸 / ゲノムワイド関連解析 |
研究実績の概要 |
分岐鎖アミノ酸(BCAA)と膵がんの関連に関する疫学的な多角的評価を目指すために、BCAAの膵がんにおけるメンデル無作為化(MR)研究を計画した。この実施のためには、①SNP-Exposureの関連として、①-1.既報によるBCAA濃度に関連するSNPの探索 ①-2.日本人における血中BCAA濃度のゲノムワイド関連解析(GWAS)の実施、②SNP-Outcomeとして①で抽出したSNPについて膵がんとの関連におけるβ値の算出という段階がMR解析に必要である。①-1に関して、GWAS catalogや他疾患に対するBCAAのMR研究においてはヨーロッパにおけるGWASの結果が中心であり、アジア人からの結果を得るためにも、既報からのSNP抽出は①-2より優先順位が下がると判断した。①-2については、本年東北メディカルメガバンク機構と共同研究契約を締結し、必要となる関連する変数の選定の上データセットを配置し、形質の変換方法や解析計画を設定した。続いて、これまでに設置したセキュリティ管理されたVPN端末を用いスーパーコンピューターに遠隔でアクセスし、約15000人の日本人成人(平均年齢58歳)における血中BCAA濃度に関してのGWASを実施した。バリン、ロイシン、イソロイシンとその総計の計4種類に対してGWASを実施し、空腹時間については採血時空腹でないと明らかであった3812名を除外した解析を実施した。②については、膵がんは罹患数としては多くはないがん種のため、最長20年近い追跡期間であっても、約45000人の集団から計166例の膵がんの発生があったことを確認した。続いて欧米人からの既報のSNPを用いた既に測定されている多目的コホート内のBCAA測定値等を利用したone-sample MRをpreliminaryに実施したが、この検討では有意な結果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記①-2の実施にあたり、共同研究契約の締結と解析者の追加などの手続きに時間を要したため、データセット配置までの時間などに関して全体としては予定よりやや遅れていたものの、2年次末までのGWAS完了とSNP-outcomeデータの確認までは達成できており、概ね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
二年次末までにGWASまで実施したが、この結果に関する解釈とMR解析への使用についてはreplication studyや文献における検討を要する可能性がある。Replication studyを実施するためには、少人数のBCAA測定が既に行われておりタイピングも実施済みである集団に対するimputationから行う必要も検討している。MR解析においては、SNP-outcome集団として遺伝情報の揃った2種類のケースコホート集団約18000人おいて、GWAS結果の検討により決定したSNPに関するβ値を算出する予定だが、既報の(欧米人集団からの)SNPを用いたpreliminaryな検討の結果では、症例数が限定的であることが結果の解釈を困難にする可能性があると考えられ、アウトカムに関する解析方法を検討する必要もあると考えられた。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により国内外の学会やセミナー等はオンラインでの参加となり旅費を使用しなかったため、次年度に持ち越し、今年度と同様スーパーコンピューター使用料等として利用する予定である。
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