研究実績の概要 |
本研究では、型判定が極めて困難となる複数人のDNAが混在した、所謂混合試料を対象とした新たな検査法を確立することを目的とし、ミトコンドリアDNA (mtDNA)のハプログループを指標としたデジタルPCR (dPCR)による検査システムの構築を試みた。 まず、日本人集団におけるmtDNAハプログループ頻度に基づき、18個の一塩基多型 (Single Nucleotide Polymorphism ; SNP)部位を標的と定め、それぞれの標的に対し、dPCR用のプライマー及びプローブを設計した (ハプログループM, M7, M8, M9, M10, G, D, D4*, D4a, D4b, D4e, D5, N, N9, A, Y, F, B)。プローブについては、野生型及び変異型に対してそれぞれHEX及びFAMで標識したものを用意した。 その後、野生型及び変異型のコントロールとして、18個の標的部位を含む二本鎖DNAをそれぞれ合成し、それらがdPCRにより正しく判別できるか検討を行った。検討にはQX200 Droplet Digital PCR システム (Bio-Rad)を使用した。 検討の結果、9個の標的部位では正しく判別することができた (G, D, D4*, D4a, D4b, D4e, D5, A, F)。一方、残る9個の標的部位については、増幅が生じなかったり、非特異的な増幅が生じてしまったりしたことから、プライマー及びプローブの配列を見直し、改めて検討を行う必要があった。 日本人集団におけるmtDNAのハプログループ分類を行うには、上述した全ての標的部位に対して型判定を正確に行う必要がある。今後、それぞれの標的部位に対する反応条件を精査し、型判定に最良な反応系を構築した後、dPCRの定量性を活用して混合試料に対する検討を行う予定である。
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