バリア放電イオン化検出ガスクロマトグラフィー(GC-BID)の法医学的応用を目的としていた。GC-BIDを用いた無機ガスの測定においてヘッドスペースサンプラーを導入し、オーバーナイトでの測定を可能とした。水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンガスおよび亜酸化窒素の標準ガスをそれぞれ測定し、それぞれのピークを検出したことより、これらが測定可能であることを確認した。これまでに、既知濃度のこれらの標準ガスをエアバッグに充填し、装置のガスサンプラーから注入して測定し、得られた結果から検量線を作成していた。しかし、ヘッドスペースサンプラーを使用することでガスサンプラーは使用できず、専用のバイアル瓶にサンプルを注入して測定することとなり、これまでより空気の混入が多くなるため、水素、一酸化炭素、二酸化炭素およびメタンガスについて検量線を改めて検討していた。また、亜酸化窒素については、ピークは検出されるもののバックグラウンドと重なる傾向があったためプロトコルの再検討やカラム交換、エージング等を検討した。また、血液試料を測定し、特異な無機ガスの検出や酸化の有無による測定結果の違い、死後経過時間と水素量の関係等を検討していた。測定した血液から水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンガス以外の特異な無機ガスが検出されることはなく、亜酸化窒素も検出されなかった。死後経過時間と水素量は関連がみられそうではあったが、研究期間が短く、明確な結果は得られていない。
|