研究課題/領域番号 |
19K19487
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
前田 一輔 横浜市立大学, 医学部, 助教 (40724761)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 溺死診断 / mRNA / RNA-seq / RT-qPCR |
研究実績の概要 |
法医学で経験する溺死症例の中には剖検時に鼻口部の細小泡沫、肺の膨隆、胸水貯留などの溺死の特徴的な所見が認められず、診断が困難な場合もある。今回、淡水(蒸留水)または海水(3.5% NaCl水溶液)を経気道的に注入した溺死ラットと対照ラット(CO2ガス安楽死)を用いて肺からmiRNAを含むtotal RNAを抽出した。抽出したRNAからRNA-seqを行い、網羅的に溺死特異的に発現変動している遺伝子を解析することで溺死診断に有用な分子マーカーをmRNAレベルで探索した。その結果、溺死特異的に有意な発現変動のある遺伝子が2000以上検出された。GO解析では低酸素誘導関連遺伝子群や物理的刺激応答に関連した遺伝子群で溺死特異的に発現変動していた。いずれも溺水吸引による酸素欠乏または溺水流入による肺胞刺激により発現変動した可能性が示唆された。その他にも炎症反応、アポトーシスなどに関連した遺伝子群でも発現変動が認められた。 今後、発現変動が認められた遺伝子群の中でRNA-seqデータ解析で得られたCPM (count per million)値が高い遺伝子を中心にRT-qPCRを行い、精査していく予定である。さらに淡水溺死特異的または海水溺死特異的に変動していた遺伝子についても同様に解析する。同定された溺死診断候補遺伝子については遺伝子発現を制御するmiRNAをin silico解析にて抽出し、RT-qPCRによって精査することで溺死診断に有用なmiRNAマーカーを探索する。同定された複数種類の指標を用いることで分子生物学的な新たな溺死診断法の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
溺死特異的に変動する候補遺伝子が検出された。検出された遺伝子についてRT-qPCRを行う予定であったが、所属機関変更後、動物実験から再度行っており、条件検討やサンプル収集に時間を要したため、当初の計画よりやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
検出された溺死特異的遺伝子をRT-qPCRにて発現解析を行い、さらに候補遺伝子を制御するmiRNAについてもin silico解析にて候補miRNAを抽出し、溺死診断マーカーを探索していく。また、淡水または海水溺死特異的なmRNAやmiRNAについても同様に解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はRNA-seqや動物実験のための試薬や消耗品に費用を計上したが、RT-qPCRを行うまで至らなかったため、次年度に繰り越すことになった。本年度は繰り越した予算と合わせ、当初の予定通り遺伝子発現解析や追加の動物実験に使用する予定である。
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