研究課題/領域番号 |
19K19490
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
西 健喜 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (70759472)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 身長予測 / Forensic DNA Phenotyping / FDP / SNP / 法医学 / 法医遺伝学 |
研究実績の概要 |
体型は非常に大きな外的身体特徴の一つである。GWAS研究によって体型に影響を及ぼす遺伝子領域は多数報告されているが、その数は膨大であり、また生活習慣による影響を受けることから遺伝子による体形の予測は困難とされる。体型を決定する要素の中でも生活習慣による影響が少なく、遺伝子の影響が80%以上とされるのが身長であり、我々はDNAからの身長傾向の予測を目的として研究を行っている。 現在までにヨーロッパ地域(EU)、東アジア地域(EA)、および日本の3つの地域において、身長と関連すると報告された42のSNPを選択し、日本人152名(男性78名、女性74名)における身長とDNAとの関連について解析した。各SNPの効果Alleleを予測スコアとして換算し、実身長との比較を行った結果、男性では相関係数0.3893、女性では相関係数0.2636と弱い相関を示した。また身長傾向を3群(高身長、中身長、低身長傾向群)に分類して解析を行ったところ、男性において中~高身長傾向群と低身長傾向群との間に有意な差(p<0.0001)が認められた。 EUで報告のあった身長関連SNPは、女性において効果Alleleの影響度が低く、相関性が見られない結果(相関係数0.042)であり、EAおよび日本で身長との関連性が強いとされたSNPにおいては弱いながらも相関性が確認されている(EA=0.219、日本=0.250)。このことから身長予測に用いるSNPを選択する上で、地域(および性差)も検討すべき要因だと考えられた。また、上記の結果は現在までに解析した全てのSNPが含まれており、効果Alleleが逆の傾向を示したSNP(高身長傾向とされるAlleleが低身長傾向を示したSNP)も含まれている。日本人の身長を予測するのに効果的なSNPの選択が可能となれば、身長傾向予測の実現可能性はより高くなると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染蔓延により、新規サンプル(口腔粘膜)採取の中断を余儀なくされている。
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今後の研究の推進方策 |
サンプル採取が可能であればボランティアを募集する予定であったが、現段階においても難しいと考えられることから解析SNP数を増やしての予測精度の向上を行う予定である。 現在までの結果は効果Alleleが先行研究と逆の傾向を示したSNPも予測結果に含んでいるため、今後は解析SNP数を増やすとともに、地域差および性差に対して効果的なSNP(少ないSNP数でより効果的な身長予測が可能な組み合わせ)の検討を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症まん延により、ボランティアによるサンプル(口腔粘膜)採取の中断を余儀なくされ、謝礼に使用予定の金額が次年度使用額として生じている。 現在のコロナウイルス感染者数発生状況から見て、サンプル増加による予測精度の調査は難しいことから、解析SNP数を増やことによる身長予測精度向上(Primer作成およびSNP解析試薬)に使用する予定である。
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