褥瘡や糖尿病性下腿潰瘍など慢性創傷の難治化の要因に感染が挙げられる。慢性創傷の90%以上から微生物が検出される、検出される微生物の70%は細菌である。緑膿菌は創部から検出される細菌の30~50%を占める細菌である。 感染を有する慢性創傷のケアとして、洗浄、デブリードマンなどが選択されるが、宿主の免疫低下などにより、感染の問題を解決することは難しい。細菌の排除には免疫を司る白血球が重要な役割を担う。白血球の中でもリンパ球に注目している。リンパ球の活性化機序はすでに明らかとされており、リンパ球を活性化することにより、好中球、マクロファージ等他の白血球への波及効果も狙うことが出来る。そこで本研究では、リンパ球の活性化が感染創の細菌排除に与える影響について解析した。 リンパ球活性化物質投与マウスおよび、Vehicle投与マウスの背部に直径6 mm皮膚生検用デルマパンチを用い全層欠損層を2つ作成し、緑膿菌PAO1株を0.7~1.0×10^4 CFUを創部に接種した。経日的に創を摘出し、創部緑膿菌数、再上皮化率、サイトカイン、ケモカイン、抗菌ペプチド産生について比較検討した。Vehicle投与群と比較し、リンパ球活性化物質投与 群では創部緑膿菌数が緑膿菌接種5、7日目に有意に低下した。さらに、好中球数が活性化物質投与群で有意に増加した。また、炎症性サイトカイン、抗菌ペプチド産生が有意に増加した。一方、再上皮化率、ケモカイン産生には差は認められなかった。 以上の結果より、リンパ球活性化物質の投与が創部の緑膿菌排除を促進することが明らかとなり、それには湖中級数の増加、サイトカイン、抗菌ペプチド産生増加が関与する可能性が示された。
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