本研究は、患者・家族の攻撃性に対する臨床看護師の対処能力を育成するための教育プログラムの効果を測定することを目的としている。 2022年度は、2021年度までの調査研究をもとに作成した、ディエスカレーションの要素を含むe-learning教材による教育介入を、調査会社のモニターである臨床看護師515名を対象に実施し、2020年度に開発した日本語版Management of Aggression and Violence Scale(MAVAS)などを用いて、患者・家族の攻撃性に対する態度得点の介入前後の変化を測定した。また、介入の効果についての認識を問う自由記載項目により、質的データを併せて収集した。 収集データの分析により、日本語版MAVASの一部の項目における有意な改善がみとめられ、患者・家族の攻撃性に対する態度に対する教育介入の一定の効果が確認された。また、自由記載項目の質的帰納的分析により、介入内容(理論から具体的スキルへの発展、具体的状況を想定した対処法など)、および、介入方法(e-learning教材の構造や視聴方法)などに対する肯定的評価が示され、量的データの変化を説明する結果となった。一方で、適用範囲の限界についての記載もみとめられ、今後本教材を使用する際の注意点として活用可能な知見が得られた。 量的・質的データの双方より、一連の研究で作成したe-learning教材による教育介入は、臨床看護師の患者・家族の攻撃性に対する態度に対する効果を有すると結論づけられた。
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