社会情勢の変化の中で、対象者の健康問題を的確にとらえ、実践できる看護人材の育成が望まれている。基礎看護教育の中でも、学生は臨地実習を通して看護実践能力を養っていく。多岐にわたる臨地実習の学びを看護実践能力につなげるには、事前学習での準備が重要である。 そこで本研究では、机上訓練からシミュレーションに適応できるケースマップ(以下CM)法に着目し、実習前の事前学習を充実させることで、思考と実践をつなげ実践能力の向上を目指すことを目的とした。 看護系大学における実習事前学習の現状を把握するため、質問紙調査を実施した。汎用性の高い学習支援ツールが望まれていたことから、術後合併症CMを作成した。作成したCMを用い、A大学3年次生急性期実習受講者のうち研究に同意を得られた72名に対し、CM法による学習支援に対する学習成果分析を行った。うち、16名からは、実習後のインタビューを実施し、学生側からの有用性について検討した。 結果学生は、CMにより術後の状態を俯瞰して捉えること、学習不足部分を明確にすることができた。実践では、事前学習で作成したCMと、受け持ち患者の状態を比較することで、必要な看護を導き出すアセスメントを補助し、看護提供の判断ができた。 対象者の状態を予測し合併症を予防していく術後の看護は、困難感を抱く学生も多い。事前学習を十分に行い、自身の学習が実践に活かされることで、学生は達成感を得るとともに、よりよい看護を提供したいと次の学習につなげることもできていた。これらのことから、CM法による事前学習は、実践につなげる効果があったと考えられる。 なお、新型コロナウイルス感染症により、臨地実習の受け入れが制限により、学内実習期間の変更に伴いシミュレーションや振り返りの時間増加は、結果に影響を与えていると考えられる。今後の課題として、CM法の効果的な指導方法について検討していく。
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