研究課題
本研究の目的は看護職のための認知行動モデルに基づいたコミュニケーション教育プログラムを開発し、その有効性を検証することである。看護師・助産師・保健師は患者や妊産婦、その家族と生死に関わる危機的で重要な時間を共に過ごす。「共感」「傾聴」が看護師として当然の姿勢と教育されるが、具体的な方法を訓練される機会は限定的であり、看護師個々の素質や性格に委ねられている。コミュニケーショントレーニングが看護の質の発展やメンタルヘルスの向上に役立つことが米国等で示されている。これらの知見から本研究を実施することとした。教育プログラムは認知行動療法に熟練した医師と心理士等により開発され、講義と演習を含む一日研修である。看護職等を対象に研修を行い、受講前後に質問紙調査を行った。調査内容は「対話の自己効力感(15項目、4件法)」等であり、対応のあるt検定を行った。分析対象は38名であり、そのうち看護職の割合は81.58%であった。対象者の平均年齢は43.24±10.2歳、経験年数は17±9.65年であった。「対話の自己効力感」の総合得点について、研修前は24.94±5.06点、研修後は25.83±5.09点であり有意な差はみられなかった。各項目のうち「相手にとって問題となる出来事を「きっかけ」「考え」「感情」「体」「行動」に分けて考えることができる」(t(34)=2.88 , p = .007)、「対話の時間を効率よく使うことができる」(t(34)=2.23 , p= .032)について有意な差がみられた。CBTを活用した対話スキルを学ぶことは、患者が抱えている問題となる出来事を「きっかけ」「考え」「感情」「体」「行動」に分けて考えることや、対話の時間を効率よく使うことの自己効力感に有効であることが示された。その他の研究成果としては、学会発表や国際会議等を通し当研修や研究を発表した。
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保健の科学
巻: 62(2) ページ: 115-119
臨床精神医学
巻: 51(3) ページ: 233-238