看護師は、看護を必要とする対象、すなわち患者やその家族に対して責任を果たす必要がある。国際看護師協会(ICN)や日本看護協会が示している責任は、いずれも看護専門職としての抽象的な理念や指針にとどまり、看護師が何をもって責任を果たしたと言えるのか、具体的にどのように責任を果たすかなど、看護師の実践を踏まえた内容は示されていなかった。看護師をめぐる公的な資料において、看護師の責任が明確に示されていない状況は、看護専門職としての役割や立場の不明確さを招く可能性があった。そこで、本研究課題では、看護師の実践に焦点を当て、看護師がどのように責任を果たそうとしているのか、そのプロセスを明らかにすることを目的とした。高度な実践をしている看護師15名にインタビュー調査を行い、質的帰納的に分析を行った。 分析の結果、看護師が責任を果たそうとするプロセスには、看護師は看護専門職としての特性を意識化する必要があり、実践により患者にとっての利益を届けるあるいは患者にとっての不利益を回避するという一連の内容が含まれていたことが明らかになった。看護師は、医療者間で得た患者の情報を共有することによって、収集した患者の情報を実践に反映し、患者の日常生活が維持できるよう生活者として患者を尊重することも、看護師が責任を果たそうとすることだと考えていた。そして、看護師が実践によって、患者にとっての利益を届けるすなわち患者がより良い状態になるという目的を達成できるように、患者に利益を届けるための関門機能として責任を果たそうと考え実践していたことを明らかにした。
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