研究課題/領域番号 |
19K19527
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大河原 知嘉子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 助教 (80632091)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 訪問看護師 / 訪問看護実践能力 / 患者アウトカム / 継続教育・研修 |
研究実績の概要 |
本年度は一部予定変更して2019年度行った全国調査の分析により、訪問看護師の事業所・個人属性などと再入院や患者アウトカムとの関連を明らかにした。アウトカムは2018年度の利用者の転帰として再入院率、在宅死亡率、機能改善率とした。それぞれ再入院率(中央値:13.7、四分位:0-28.6)、在宅死亡率(50.0、32.3-71.4)、機能改善率(8.0、0-20.3)であった。それぞれのアウトカムについての多変量解析の結果、再入院率は「営利法人でない」「ターミナルケア加算取得」「管理者に見合った裁量権がない」「医療保険利用者の訪問割合が低い」「疼痛管理が必要な利用者割合が高い」ほど高かった。在宅死亡率は「ターミナルケア加算取得」「主治医とメールで情報交換している」「経験年数3年未満の看護職員割合が高い」「40歳未満の看護職員割合が高い」「特別管理加算の利用者割合が低い」「初回訪問までの平均日数が短い」「要介護4以上の利用者割合が高い」「利用者の希望に応じた看取り実現のための多職種連携をしている」ほど高かった。機能改善率は「医療法人でない」「事業所継続年数が長い」「退院時共同指導加算取得」「管理者経験年数が短い」「理学療法士がいない」「看護実践能力レベルの低い看護師割合が高い」「訪問職員中のリハビリ職員割合が高い」「医療保険利用者割合が高い」「65歳以上の利用者割合が高い」ほど高いことが明らかになった。内部研修実施や外部研修受講状況との関連は見られなかった。現在この調査結果について論文を作成している。 また訪問看護師を対象とした外部研修を明らかにするために、Web調査を行ったが、COVID-19の影響により、オンラインでの同期・非同期教育や研修がさまざま行われるようになり、居住地域により参加が難しかったり、時間的に難しかった研修へのアクセスが大きな問題でなくなっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は産休明けであったことやCOVID-19の影響により、進捗としてはやや遅れている。 全国調査の分析は予定通り行えているが、論文化が遅れているため、引き続き取り組んでいく。 Web調査により教育・研修のアクセシビリティが大きく変わっていることが明らかになり、またCOVID-19の影響により現状を反映した介護情報公表システムのデータ入手が難しい現状にある。今後行う面接調査の対象者を取り巻く状況と、データベースでの状況が大きく乖離しているため、このままデータベースの量的データと面接調査の質的データを混合研究法により統合することは困難となった。そのため、データベースによる分析ではなく、質問紙調査により現状を反映したデータを得る等、内容の修正が必要となった。 教育力と関連があると想定している訪問看護実践能力について、全国調査ではクリニカルラダーの分類を使用したが、学術的に信頼性・妥当性は検証されていないのが現状である。在宅領域にフィットし、信頼性・妥当性の高い日本語で調査が出来る実践能力測定尺度は見つかっていないため、客観的な測定が難しい状況にある。 上記の理由により、2021年度以降も研究予定を変更して介護情報データベースの既存データ分析は中止とし、まずは訪問看護実践能力を質問紙調査により明らかにする必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況での理由により、データベースを用いた教育・研修のアクセシビリティや困難に関する研究を修正し、方法や内容を変更する。訪問看護実践能力と教育・研修との関連を質問紙調査により明らかにするよう方向性を転換する。 2021年度は、訪問看護師の実践能力を明らかにするために、尺度を用いた質問紙調査を行う。昨年度末から文献検討を行っており、包括的に訪問看護実践能力を測定できる可能性のある尺度を選定した。尺度の開発者から使用許諾を得たため、今後は質問紙調査の計画を練り直し、調査用紙の作成、倫理審査委員会での承諾を得たのち、調査を行う。結果が得られたら分析を行い、訪問看護実践能力の傾向を明らかにするとともに、教育・研修との関連をみる。2022年度も引き続き結果の分析と論文投稿をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
産休明けで進捗がやや遅れ、論文投稿に至らなかったため。 COVID-19の影響により国際学会や海外でのセミナー参加のが出来なくなり、渡航費や参加費を使用しなかったため。また研究内容の方向性を転換する必要が生じたため。
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