看護基礎教育におけるケアリングの教育については、学内の授業では概念の説明に留まり、ケアリングを学ぶ場の中心として臨地実習における教育に依存している。臨地実習によるケアリング教育は、必ずしもケアリングを学ぶことができることを担保しているとはいえない。ケアリング教育が可能となるとされる、患者との関係性は実習環境や患者の状態、学生の緊張やストレス負荷、入院の短縮化、コロナ禍などの実習環境に大きく影響されるためである。 本研究では、この課題を克服するべく、学内の講義、演習など学生の学修環境のコントロールが学生全員に可能であり、かつ心理的安定性が確保された場所でのケアリング教育を構想しようと試みであった。 先行研究、授業実践とその反応の分析から、これまでのケアリングの概念の教育に加え、教育学の道徳の教授法や、Narrative Based Medicineを援用し、学生がケアリングを想起するような思考を促す授業案を考案した。具体定期には、ケアされる人とケアする人の関係性の構築についての議論と理解ができるようなテーマ設定をしたグループワークを行う。そして、そのグループワークを基盤として、ケアされる人とケアする人の双方の成長が達成されるような物語をを読むことや、学生自身が物語を創作するという授業を行う授業を考案した。 この授業を受けた学生のリフレクションを質的に分析することを複数年重ねた結果、学生がケアリングについて考えを深められていたこと、ケアリングが看護にとって必要な要素であり、本質をなすものであるという認識がされていた。ケアリングは意識的に実践に結び付くことが、ノディングスの述べる自然なケアリングの創輝につながるものである。 以上の結果から、本研究成果から得られた内容を活用したケアリング教育の授業案を構築することができた。
|