報告者は先行研究にて、急性期病院に勤務する看護職の看護業務に関連する腰痛の背景に潜む人的資源管理および労働環境管理上の問題を明らかにし、それらを基にした「急性期病院における腰痛対策看護管理実践モデル」を開発した。このモデルを現場の看護管理実践に適用するための支援ツールを開発することが本研究期間における目的である。 これまで、看護実践現場においては、現実的に腰痛を完全に予防することが困難であるという考えが根強く存在しており、対策と発症率の関連に焦点が当てられてきた。しかし、本研究においては、腰痛を発症した看護職が体験する様々な不利益に着目し、その不利益を最小限にするための実践を講じていることに意義があると考える。 令和4年度は、前年度に作成した「アクションリスト(第2案)」(モデルの「問題を発見するための行動」、「問題の分析視点」、「問題への対応」、「実践の評価」各要素に対する行動レベルでの管理実践)の見直しから着手した。まずは新型コロナウイルス感染予防対策により変更を余儀なくされた、実践現場での教育・管理体制の現状を踏まえて、内容の修正を図った(「修正版アクションリスト」の作成)。 次に、依然現場でのフィールドワークや集合教育等の制限があることから、令和4年度は、「修正版アクションリスト」を看護管理実践現場に適用するために必要な「知識の習得と理解」に焦点を当てた教材の作成に向けて、教材の構成要素や取り上げる事例の検討、試作とワーキンググループ内での意見交換を行い、オンデマンド教材Ver. 1を作成した。
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