本研究では他者による思考の推測が思考構造の解明において 重要なプロセスであると考えている。研究方法としては、対象者に「熟練看護師が模擬患者の病室を訪室して援助を実施する場面の動画教材(以下援助場面動画教材)」を視聴してもらい(擬似共体験)、実施されている援助行動と思考について対象者に発言してもらう。発言方法は①初回動画視聴時の think aloud 法、②2回目動画視聴時のグループインタビューとする。同一条件下である援助場面での思考や行動を他者である対象者らに代弁してもらうことで、 動画中の看護師の思考を推測という形で測定し、新人看護師と 熟練看護師の思考構造を明らかにする。発話データを内容分析して質的に検討し、看護師の思考構造と思考能力を明確にし、看護師の思考能力評価項目を作成する。研究を実施するにあたり、文献検討とコロナ禍での実験の実現化を検討した。検討結果をもとに、研究倫理審査委員会に本研究の倫理審査申請をし、承認を得た。実験実施のための機器準備や書類作成等を行なった。予備実験を2度実施し、①動画視聴によって、あたかも自分自身が援助を実施しているような疑似共体験の可能性が示唆されたとともに、think aloud法の実施には一定レベルの練習が必要であることがわかった。また、②グループインタビューを通して、熟練看護師の複雑な思考を発話してもらうには、新人看護師による問いかけが発話のきっかけになることが示唆された。
|