本研究では,就労継続支援 B 型事業所を利用し自立を目指す精神障がい者の内面的な実態と,自立を促す支援スタッフの支援プロセスを明らかにした。その結果から,神障害者の安定した就労を推進していくために,農福連携の場に“医”がどのように参画していくのか,就労継続支援B型事業所における農福医連携のあり方(農福“医”連携モデル)の構築を行い,試行的に効果の検証を行った。 まず,就労継続支援B型事業所に通所する精神障がい者13名,精神障がい者を支援する職業指導員と生活支援員計7名へ半構成的インタビューを行い,得られたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果,精神障がい者にとっての農作業の意味は,農作業からもたらされる成長と回復を経て,いきかたを体得していく[農作業がもたらす成長と回復のプロセス]を示していた。また,職業指導員と生活指導員の支援プロセスは個の捉えを中心に据え,それぞれの専門性や視点を活かしながら[耕作の営み]と[調和の営み]のサイクルを回すことで,作業能力の獲得と社会性の獲得というバランスの取れた支援につながり,利用者のリカバリーが促進されていくことを示していた。一方で捉えていた個がぶれて[淀み]のサイクルに入ると,自分の関わりに自信が持てず支援の停滞につながっていた。 研究結果を踏まえ,農福医連携モデルの一つの取り組みとして,就労支援事業所B型において看護職者が,支援スタッフである職業指導員や生活支援員に対し,精神障がい者の精神症状に伴う言動の意味やその捉え方について情報提供するとともに,一緒に事例検討会を行っていく協働プログラム(案)を作成した。支援スタッフより支援に困難を抱える事例を提示してもらい,支援スタッフとともに利用者の“個”の捉えについてディスカッションしながらプログラムの効果検証を進めた。
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