研究課題/領域番号 |
19K19572
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研究機関 | 札幌保健医療大学 |
研究代表者 |
原田 由香 札幌保健医療大学, 保健医療学部, 講師 (00464694)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | うつ病 / 修学支援 / 医療系大学大学生 / 家族システム |
研究実績の概要 |
大学における障害学生の在籍率は増加傾向にあり、修学支援として合理的配慮を行うことを義務もしくは推奨されるようになり、支援の標準化が進みつつある。しかし、精神障害の中でもうつ病を有する学生は配慮を受けることが逆に頑張りを本人に強いてしまう場合がある(近森,2018)など、うつ病を有する学生への支援の難しさが窺える。特に医療系大学の学生は、卒業要件として臨地実習が複数あり、大学側だけでなく実習施設側も病状への対応は苦慮しているのは明白であり、うつ病を有する医療系大学学生を対象とした具体的な修学支援策の確立が期待されていると考える。またうつ病は患者だけでなくその家族にも影響をもたらす疾患であり、うつ病を有する学生の生活全般を支える立場である家族を含めた修学支援を検討する必要がある。そこで本研究の目的は、医療系大学在学中にうつ病を発症以降、学生は修学を継続するためにどのような体験をし、システムとしての家族からどのような影響を受け、何をサポートと感じたのかについて明らかにし、修学支援に必要な示唆を得ることとした。 研究計画の初年度である令和元年度は、うつ病を含む精神障害を有する学生への修学支援や家族システムに関する情報収集・フィールドワークと、インタ ビュー準備・調査を実施する予定であった。情報収集として、国内の大学におけるうつ病を含む精神障害を有する学生対象の修学支援についての先行研究を概観 することに加え、各大学のHPや書籍等から情報を得た。また日本の大学と比較し、障害学生の受け入れが多い諸外国における修学支援について、まず合理的配慮 という概念が誕生した米国を中心に欧州等の配慮措置の内容等について文献や書籍を概観した。インタビュー準備・調査については、所属する大学の倫理委員会 に研究計画書を提出し、倫理審査を受け、承認番号を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
インタビュー調査の準備として、インタビューガイドを作成し、プレインタビューから試みた。具体的には5月以降も新型コロナウイルス感染症の感染収束の兆しがみえず、対面でのインタビューが困難であったことから、プレインタビューの実施をオンラインで実施するための準備を進めた。その経過の中でセキュリティーを考慮したPC設定や操作等の負担が大きいことが分かり、協力者の負担を考慮し、オンラインによるインタビュー調査は断念した。その後、感染状況が比較的落ち着いた段階で、マスク着用やアクリル板の使用など感染予防に努めながら対面にてプレインタビューを1名実施した。その結果、マスク着用に伴い、表情を読み取ることが困難であること、語りの中で聞き取りにくい部分があったことなどの課題が残された。 本研究の対象者は、学生時代にうつ病の経験を有する看護師であり、状況として新型コロナウイルス患者の対応や予防策により心身共に疲労が蓄積していることが予測された。また病院施設の多くが面会者など外部との接触を極力回避していることから、研究への協力依頼が困難な状況であった。そのため、病院病棟の業務が通常に近い状態に戻った段階でインタビュー協力を依頼する予定でいたものの、進めることができていない状況である。 研修会等への参加については、オンライン開催の学会参加および市内で開催された家族療法ワークショップに参加し、家族療法に関する理解を深めた。
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今後の研究の推進方策 |
現在新型コロナウイルス感染者の病床がひっ迫傾向にあり、複数の病院施設においてクラスターが発生している状況である。しかし市内の病院に勤務する医療職者のワクチン接種が開始され始めていることから、医療職者のワクチン接種状況の確認ならびに、新型コロナウイルス感染者対応病院以外に勤務する学生時代にうつ病経験を有する看護師に研究協力を依頼することで、少しずつ研究を進めていく予定である。 万が一新型コロナウイルス感染状況が収まらず、インタビュー調査を進めることができない場合は、オンラインでの遠隔授業期間が長期化することに伴う医療系大学生の抑うつ感など、現状を把握するための実態調査についても検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルス感染が収束せず、学生時代にうつ病の経験を有する病院に勤務する看護師を対象としたインタビュー調査を進めることは困難であった。また研究フィールドとして考えていた東京のサポートグループや市内のクリニックが主宰するグループ活動にも参加することができなかった。 しかし今年度は、新型コロナワクチン接種の状況や新型コロナウイルスの感染状況をみながら、インタビュー調査の実施や分析、グループや研修会参加を進めていく予定である。
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