本研究は集中治療室 (Intensive Care Unit : ICU) に入室してから長期間の困難な状況を乗り越える力であるレジリエンスと、家族の集中治療後症候群 (Post-intensive care syndrome-family : PICS-F) の変化と、レジリエンスがPICS-Fに与える影響を明らかにするためにICU入室早期とその後の2時点の縦断研究を実施することを目的とした。そして、その後に予定している家族のための支援モデルを構築するための基礎資料となることを目標としている。 本年度は、昨年度に本研究の方向性を決定した内容に沿って、構築した家族支援を評価する際に、機能が良好な家族機能とはどういうものかを把握するために、家族全体の関係性を捉えた家族機能とレジリエンス、PICS-Fとの関係を検討した研究結果を論文化する作業を進めた。その結果、ICUに入室した患者の家族の6割は支援が必要な状況であった。家族が強いレジリエンスを有していると家族機能が良好である可能性を有する結果を得た。一方、家族が強い不安を抱えていること、および1か月以内にストレスフルな出来事に遭遇していることが家族機能を悪化させていた。これら3つの主な結果は、本研究の最終目標であるICUに入室した患者の家族の支援の構築のための有効な基礎資料となると考える。 本研究は、2020年からの情勢の影響を受けて、2回研究計画を見直し調査実施施設の調整および倫理委員会申請を行った。さらに3回目の研究計画の見直しを行い、その時点で研究を進められる部分を検討した。当初の研究計画を変更した部分もあるが、本研究の最終目標を達成するために、家族全体の関係性を分析した内容を論文化したことは、クリティカルケア領域における家族支援構築の貴重な基礎資料を得ることができたと思われる。
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