研究課題/領域番号 |
19K19581
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
藤浪 千種 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 准教授 (30455026)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 尿失禁 / 前立腺全摘除術 / セルフマネジメント / 看護介入 / プログラム / 患者 |
研究実績の概要 |
2019年度は国内外の文献検討を行い「前立腺全摘術後患者のための尿失禁回復支援プログラム第1案」を作成した。対象文献は、医学中央雑誌96件、MEDLINE118件、CINAHL22件であった。 前立腺全摘除術後患者の術後尿失禁出現頻度は20~90%と幅広く、腹圧性尿失禁がその多くを占めていたが、手術に伴う膀胱排尿筋の神経障害や血流障害等による過活動性膀胱や膀胱コンプライアンスの低下等による切迫性尿失禁や混合性尿失禁も存在していた。また、これら尿失禁は退院後の一時的に増強するが、術後6か月までは急速に改善し、その後は緩やかに改善または不変というのがおおよそのコンセンサスであった。術後尿失禁に対する介入には、生活指導、排尿日誌、骨盤底筋訓練、電気刺激療法、磁気刺激療法、薬物療法、手術療法があり、まずは複合的な保存治療を行うが症状の改善が認められない場合は、術後1年を目安に手術療法に移行していた。治療効果の評価は、尿流量測定、パッドテスト、QOL尺度、排尿障害の程度を測定するEPICやUCLA-PCIなどを複数用い多角的に実施されていたが、尿失禁と生活の関連や患者のセルフマネジメントに関する評価は確認されなかった。なお、術後尿失禁の状況には、術式、術前からの排尿障害、使用薬剤、心理的要因、体重、パッド交換回数などのセルフマネジメントの状況、日常生活等、多種多様な要因が関与していた。 以上より、プログラムには①尿失禁の病態をまえた複数の介入方法、②看護師が患者の尿失禁を適切にアセスメントできる判断基準、④複合的な保存療法を取り入れ患者がそれらを継続できる仕組み、⑤複数の指標を用いた経時的な評価、という要素を取り入れ、術後6か月以内の患者を対象とすることとした。 今後は、これら検討結果をもとに質問紙を作成しデルファイ法でプログラムの具体的内容を検討しプログラム第2案を作成する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は文献検討により「前立腺全摘術後患者のための尿失禁回復支援プログラム」の具体案を作成する予定であった。しかし、現時点ではプログラムの基本的要素や対象者の決定にとどまり、具体的な方法論を詰めるまでには至っていない。今後追加で文献検討を行うとともに看護学研究者や泌尿器科専門医の助言を得てプログラム第1案を作成していく。 また、2020年度に予定している専門家会議の調整を2019年1月~2月にかけ実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で調整が未定となっている。
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今後の研究の推進方策 |
プログラムの第2案作成に向け、専門家会議の開催の見通しが立たないことを踏まえ、2020年は専門家(皮膚排泄ケア認定看護師、泌尿器科医師、薬剤師、理学療法士、研究者(看護学博士))にデルファイ法による郵送での調査を行い、それによりプログラムの具体的方法論を詰めていく予定である。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえながら、研究フィールドと調整を行い、ベースラインデータ収集のための調整を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は文献検討により「前立腺全摘除術後患者のための尿失禁回復支援プログラム」の概要を検討し、看護学研究者・泌尿器科専門医の助言を得ながら具体的内容を整えた「前立腺全摘除術後患者のための尿失禁回復支援プログラム(第1案)」を作成する予定であった。しかし、2020年に入り新型コロナウイルス感染拡大の影響から、プログラムの具体的内容を詰める会議が実施できなかった。そのため、会議に要する旅費が使用できていない。2019年度の残金は、2020年度に実施予定のデルファイ法における調査(郵送費)で使用する計画である。
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