研究課題/領域番号 |
19K19589
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
眞浦 有希 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 助教 (40803135)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナラティヴ / 多声性 / 精神科看護 / リカバリー |
研究実績の概要 |
近年の精神科医療においては従来の治癒や症状の軽減など、「問題」の解決を志向する医療から、症状や障害が続いていても人生の新しい意味や目的を見出し、充実した人生を生きていくことを重視する「リカバリー」の概念が拡大している。これは従来の医学モデルからNMB(Narrative-based Medicine)など、当事者の経験の意味を重視する医療が注目され始めたためと考えられる。国内においても「リカバリー志向」の援助モデルやプログラムが開発されるなど、臨床実践においては重要な概念となった。 本研究の独自性・創造性は、精神科看護師が患者の語りを「多声的なものとして捉える」という経験、それによりこれまでの看護実践が問題解決志向から「リカバリー志向」へと転換すること、それらの構造とプロセスを質的研究によって明らかにすることにある。患者にとっての語りの意味や、語りを聴く看護師の感情体験ではなく、患者の語りを通して転換する精神科看護師の実践というダイナミクスを明らかにする。看護師の(ネガティヴな)感情体験としてではなく、リカバリー志向という認知的・実践的変容の様相を示し、患者の語りを聴くことの意味を新たな側面から提示することが可能と考える。さらにはそれを理論化し、実践モデルとしてプログラムの開発やその普及を目指すことが、本研究の将来的課題である。 本年度は各種データベース(医学中央雑誌・CiNii・MEDLINE・CHINAL・PsycINFO)を用いて、国内外のリカバリー志向の援助プログラムにおける「病の語り」の位置付けを検討する予定であったが、それに加えてインタビュー調査・テクスト分析を進める上での方法・方法論としての「Dialogical narrative analysis」の検討も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は各種データベース(医学中央雑誌・CiNii・MEDLINE・CHINAL・PsycINFO)を用いて、国内外のリカバリー志向の援助プログラムにおける「病の語り」の位置付けを検討する予定であったが、それに加えてインタビュー調査・テクスト分析を進める上での方法・方法論としての「Dialogical narrative analysis」の検討も行った。そのため文献レビューの発表までには至らず、次年度の課題として計画している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度前期には文献レビューの発表を目指し、後期にはインタビュー調査に向けて参加者のリクルートを開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の拡大による活動自粛に伴い年度末に予定していた国内外の学会参加等が中止となった。また、事前調査として計画していた少人数の精神科看護師へのフォーカス・グループ・インタビューも実施しなかった。次年度予算として学会参加に伴う旅費やインタビュー調査の謝金等に使用する計画である。
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