研究実績の概要 |
本研究は、M,Huberらの提唱する新たな健康概念「なんとかやりくりする能力」を獲得可能な能力と位置づけ、その獲得の足場としてワークショップ形式による「気づき」「学び」を提供する場づくりを行うものである。その目的から、本ワークショップは、医療者主導の研修型ではなく、参加者同士の交流や多様なアクティビティを通して、参加者自身が持つ可能性、活動の楽しさ、心地よさを体験し、主観的健康を実感できるものとした。 初年度は、ワークショップの基礎的理論整理およびプログラム作成を行った。研究協力者とともに定期的な研究会を重ね、それらの結果をもとに、ワークショップ実践者のダンスアーティスト、県内の保健医療福祉施設の研究協力者らと、身体系ワークショッププログラムを作成した。慢性疾患患者、地域高齢者、知的障害者、幼児、小学生等、幅広い対象に向けたのプログラムを行う予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響により中止、次年度に地域包括支援センター利用者を対象にダンスアーティストによる身体系アートワークショップを複数個所で実践した。参加者への質問紙調査では90%以上が主観的健康や社会的健康を実感していたことが明らかとなった。また、アーティストや地域包括支援センター職員らのインタビューから、本ワークショップの主な成功要因として、地元の文化資本を活かしたプログラム、その地元の文化や生活を熟知したファシリテーター、参加者の特性とプログラム内容を調整できる人材や仕組みがよく機能したことの3点が明らかになった。最終年度には、さらに発展させたプログラムの実践を企画したが、感染状況のため住民対象のワークショップは中止、山形県内の医療福祉関係者を対象にプログラム体験会および研修会を実施した。 今後は、本研究で得られた成果をもとに、実践および地域のネットワーク構築、人材育成を行う計画である。
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