研究課題/領域番号 |
19K19609
|
研究機関 | 九州看護福祉大学 |
研究代表者 |
上田 智之 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 准教授 (70586320)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 発達障害 / 就労継続 / 就労定着 / 就労支援 / 認知行動療法 / 集団認知行動療法 / プログラム開発 |
研究実績の概要 |
発達障害者は、対人関係の障害、コミュニケーションの障害、限局した関心と活動といった行動上の障害特性によって、就労の定着が困難な状況がある。発達障害者の就労における対人関係が困難になった時の対応事例として、「対人対応の少ない部署への異動」「コミュニケーションの問題がある人は採用しない」などコミュニケーション手段を補完するのではなく、代替手段の活用で対策を行っていることが報告されている。この現状は、根本的な問題解決につながらないため、発達障害者の対人関係やコミュニケーションの修正が困難である。本研究では、医師との連携を図りながら、発達障害者の対人関係やコミュニケーションにおける就労困難感に焦点をあて、問題解決技法を中心とした集団認知行動療法のプログラムを開発することを目的とした。 本年度研究実施計画は、国内外の文献から発達障害者の就労に関する資料を参考にインタビューガイドを作成し、就労経験のある発達障害者10名(理論的飽和)を対象にインタビュー調査を実施することで、発達障害者の就労を困難にしている要因を明らかにすることであった。 国内外の文献から発達障害者の就労に対して、認知・行動に焦点をあてた6項目からなるインタビューガイドを作成した。 対象者の選定基準はICD-10におけるF-84.5およびF-84.9の診断を受けており、知的に障害の伴わない就労経験のある18歳以上の男女とした。医療福祉施設の雇用者・施設長、精神障害者就労支援センターへ対象者の選定を依頼した。対象者には、目的、倫理的配慮、インタビューガイドを配布し、10名から内諾を得た。 その結果、20代から50代の男性5名のインタビューを実施した。2名は体調不良のため、辞退され、3名は新型コロナウイルスに伴う移動や密接を避けるため実施できなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、国内外の文献から発達障害者の就労に関する資料を参考にインタビューガイドを作成し、就労経験のある発達障害者10名(理論的飽和)を対象にインタビュー調査を実施することで、発達障害者の就労継続および定着を困難にしている要因を明らかにすることであった。 当初は対象者10名のインタビューを実施する予定であったが、インタビュー当日の体調不良に伴う辞退者2名、新型コロナウイルスに伴う移動の自粛や密接を避けるために実施できなかった対象者が3名であったため5名び実施にとどまった。現在分析途中であるが、5名のインタビュー調査においても、就労定着・就労継続において貴重な意見を得ることができた。 しかし、理論的飽和および全国調査前の重要な調査であるため、10名のインタビュー調査を達成する必要がある。承諾を得ている対象者にはインタビュー長を実施する予定である。 以上のことから、総合的に判断して「(3)やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、快諾を得ている3名の対象者に対してインタビュー調査を実施する予定である。さらに、体調不良に伴う辞退された2名については、対象者を変更し、依頼した医療福祉施設の雇用者・施設長、精神障害者就労支援センターと調整し、2名の対象者を追加し、インタビュー調査を実施する。インタビュー終了後、質的分析を実施し、発達障害者の就労困難感に関する質問紙を作成する。さらに、就労経験のある全国の発達障害者100名を対象に大規模調査を実施し、発達障害者の就労困難の実態を明らかにする。 質問紙調査によって、明らかになったことをふまえて、最終年度には発達障害者の就労困難感に対して、代替手段の方法ではなく、発達障害者が就労の対人関係において、習慣的に自然にできるようになり、日常生活の活動になる形で、就労中の活動に容易に組み込める集団認知行動療法のプログラムを開発する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
対象者の体調不良および新型コロナウイルスの感染防止のため、インタビュー実施日時の変更および対象者の再選定のため、翌年度に謝金および旅費等に使用する。
|