研究課題/領域番号 |
19K19631
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研究機関 | 活水女子大学 |
研究代表者 |
石川 美智 活水女子大学, 看護学部, 准教授 (40638706)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 延命治療 / 血液透析 / 開始見合わせ / 意思決定 / 看護実践 / 実態調査 |
研究実績の概要 |
国内では血液透析の開始見合わせや中止に関する社会の議論は緒についたばかりであり、欧米諸国で立法化されている透析治療の開始見合わせの規定については、わが国の現行法では規定されていない。本研究は、患者・家族が延命治療とした血液透析の開始見合わせや中止といった意思決定を行ったときに、看護師がどのように患者・家族に対応し支援を行っているのか、看護実践の実態について明らかにすることを目的としている。 初年度は、日本透析医学会が認定している全国の認定・教育関連施設(1,070施設)に所属する看護師2,140名(1施設2名)に対し、質問紙調査「血液透析の開始見合わせや中止の意思決定時における看護実践の実態調査」を実施した。新型コロナ感染禍という状況下にあり、緊急事態宣言が発令された感染拡大地域については、質問調査の開始時期を緊急事態宣言解除後とした。そのためデータ収集期間・分析期間が当初の計画予定より延長することとなった。 284施設から研究協力の同意が得られた。調査結果より、看護師の透析の開始見合わせの対応経験者は約6割、中止の対応経験者は約7割であり、透析見合わせや中止の対応経験者は決して少なくないことが明らかとなった。また、実施率が高い看護実践内容、低い看護実践内容も明らかとなった。 研究2年目である本年度は、質問紙調査結果を論文としてまとめ、日本腎不全看護学会に投稿した。調査項目に自由記述項目「血液透析の開始見合わせや中止時の看護実践を行ううえでの問題や課題」を設けていたが、看護師318人より回答があった。記述内容の分析を実施し、分析結果は、論文としてまとめ次年度投稿予定としている。また、次年度のインタビュー調査に向けた倫理審査申請書の作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究初年度に、国内での透析中止事案が大きく報道され、血液透析の開始見合わせや中止に関する本研究への協力が得られるか危惧していた。しかし、284施設から研究協力への同意が得られ、計画通り質問紙調査を実施し、論文としてまとめた。国内の看護師の血液透析の開始見合わせや中止の対応経験を明らかにし、現状を表層化したことは意義があると思われる。 研究2年度と3年度で、インタビュー調査を行う予定であったが、コロナ感染拡大状況下にあり、インタビュー調査への影響を考慮し、3年目に実施することにした。次年度計画しているインタビュー調査に向け、倫理審査の申請中である。 計画では2022年度の最終年度に、血液透析の開始見合わせや中止が困難な現状の問題点を整理する予定であったが、質問紙調査の自由記述「血液透析の開始見合わせや中止時の看護実践を行ううえでの問題や課題」の質問項目に318人より回答があり、看護師が認識している現状の問題や課題に関するデータが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
患者・家族の希望通り開始見合わせや中止が実施された(あるいは希望通り実施されなかった)ときのプロセスや、患者・家族特性、関連要因を明らかにするためのインタビュー調査を実施する。しかし、コロナ感染状況により、インタビュー調査の実施に影響し、研究遂行が遅れる可能性がある。研究方法を工夫し、研究計画に従って研究を遂行したい。 研究成果については、看護師が認識している血液透析の開始見合わせや中止における問題や課題について論文としてまとめ投稿する。また、質問調査結果について学会で公表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた学会発表を行わなかったため、国内旅費が未使用であった。また、本年度と次年度で実施予定であったインタビュー調査は、本年度実施しなかったため国内旅費が未使用であった。次年度インタビュー調査を実施予定であるため、本年度の繰越金は次年度の国内旅費に充当する。 その他では、郵送費を少額で計上しており差額が生じたが、前年度の繰越金を充当した。
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