研究実績の概要 |
本研究の目的は、乳頭損傷を客観的に評価することができるツールを開発することである。2019年度から2020年度にデルファイ法にて各所見の定義を検討し、観察ツールである「授乳に伴う乳頭組織の7所見」を提案した。2021年度は、「授乳に伴う乳頭組織の7所見」を英語版に翻訳するとともに、論文や学会発表において国内外で公表した(Nakamura M, et al. 2022)。また、母乳育児支援において一定水準以上の技術・知識・心構えを持つとされる、国際認定ラクテーションコンサルタントの助産師2名の協力を得て、内容妥当性を確認した。英語版への翻訳は、当初の計画によるWild et al.,2005 の尺度翻訳の手続きは用いず、順翻訳と医学系論文の専門家3名による逆翻訳、国際学会や論文の査読課程における母乳育児関連の研究者とのディスカッションを経て内容を精錬した。
また、7所見それぞれの対処法として、助産師がどのような方法を試みているかを調査した(五味ら,2021)。ほぼ全ての所見において【ポジショニングの修正】と【ラッチオンの改善】、【創部の保湿】が行われている一方で、離開では損傷部に児の口が当たらないように抱くことや、損傷部に絆創膏を貼り刺激を減らすなど、所見の特徴に合わせた対処法が選択されていることが明らかとなった。今後の研究に向け、【創部の保湿】に着目し、国外で使用されている乳頭損傷対処の製品を輸入し、市内の1施設において試用を開始した。
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