研究実績の概要 |
本研究の目的は、妊娠後期の妊婦の睡眠状態や精神健康状態と、乳児(受胎後48~50週、52~54週、56~57週)の睡眠状態や泣きとの関係を明らかにすることである。正常妊娠経過であり、妊娠28週以降の単胎の初産婦とその出生児を対象とし、60例に調査を行い、令和2年度にデータ収集を終了した。令和3年5月~令和4年6月まで、産前産後の休暇及び育児休業の取得に伴い研究を中断していた。 研究再開後は、52組の初産の母親とその乳児を分析対象とし、生後早期の乳児の睡眠発達として夜間に長時間持続的に睡眠をとるようになること(sleeping through the night、(以下STN)の獲得)と産前産後の母親の精神健康状態との関係を検討した。その結果、生後4か月でSTNを獲得した乳児(STN児)は14名(27%)であり、生後2~3か月で夜間の最長睡眠時間は有意に増加し、覚醒回数は有意に減少した(p<0.01)。STN児の母親のGHQ得点は産後3か月間で有意に減少し、妊娠後期では非STN児の母親よりも有意に低値であった(p=0.027)。また、ランダムフォレスト分析の結果、妊娠後期及び産後4か月時の「GHQ得点」はSTN児の重要な説明変数として抽出された。その他に抽出された「分娩週数」「出生時体重」「複合家族」「就寝時の添い寝」のうち、「就寝時の添い寝」のみ、「STN児」(r=-0.440)と妊娠後期及び産後4か月時の「GHQ得点」(r=0.377、r=0.473)と比較的強い相関があった。産前産後の母親の精神健康度は乳児のSTN獲得と関連することが明らかとなった。産前の母親の精神健康度を良好に保つことは、生まれた乳児のSTNの早期獲得に貢献する可能性が示唆された。 最終年度は上記成果について、論文発表(Mayuko K, et al. Infant Behav Dev 72: 101872, 2023)、学会発表(第64 回日本母性衛生学会学術集会)を行った。
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